女郎蜘蛛

文字数 876文字

 小学校六年生の時から不登校になり学校を休んでいる、ユキコの家に私はきている。

 ユキコは小学校五年生の時に転校してきた。背中まで伸びている黒髪のユキコは、無表情で不気味な雰囲気がある。ユキコは転校後、誰とも口を利かなかった。
 ユキコの髪はぼさぼさで汚く、おまけにぼろぼろの服が不潔で、何やら異臭がし、皆から酷いいじめにあった。ユキコが転校してくるまでいじめに遭っていた私は、ユキコの転校によりいじめられなくなっていた。
 私はユキコの存在が気になり、教室で誰もいないときなど、ユキコに声をかけた。ユキコも私がいじめないと判ると安心したように、ぼそぼそと小さな声で私の問いかけに答えた。そうして私は、ユキコの唯一の友達になったのである。

 ユキコの家は、人里離れた山奥に一軒だけポツンとあった。家は、長らく放置していた空き家のように窓ガラスは割れ、少し傾いており、とても人が住んでいるようには見えない。
 ユキコの部屋は、部屋中が蜘蛛の巣に覆われ、そこには見たことがない大きな女郎蜘蛛がいた。大きな女郎蜘蛛が、ユキコと戯れている。蜘蛛の巣に絡まって逃げようともがくバッタやコオロギに、女郎蜘蛛が近づいていき、やがてそれらを食べてしまった。ユキコは、その様子をうっとりとした顔で眺めている。ユキコが女郎蜘蛛とダブって見える。私は、ユキコのことが恐ろしくなった。
 ユキコの部屋は、何やら異臭がする。それはユキコの体から匂うものと同じだった。何の匂いかと考えていると、マムシの匂いだということに気が付いた。ふと天井を見上げると、剝き出しの梁の上にマムシが這っていた。
「マムシがいるよー!」
 と私が恐怖に慄きながら叫ぶと、
「飼ってるのよ」
 とユキコが涼しい顔で言う。
 すると、マムシがユキコの前までスルスルと這ってきた。ユキコはマムシの首根っこをつかみ、絞め殺すと、そのまま口の上に持っていき、マムシの血を飲んだ。
 やがてユキコは、蜘蛛の巣に絡まって動けなくなっているバッタやコオロギを取って食べ始めた。私にも食べないかと言うので、気持ち悪くなり、部屋から逃げ出した。
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