三歳の頃

文字数 656文字

三歳の頃裏山に一人で登っていて見知らぬおばあさんに会った

腰が直角に曲がったおばあさんは杖を突きながらよぼよぼと歩いている

おばあさんは私を見るとニターッと歯のない口を開けて笑った

おばあさんは私に近づき頭を撫ぜながら 良い子だ良い子だ と云った

おばあさんの家に連れていかれオハギをごちそうになった

オハギは私の好きな粒アンだったので三個も食べた

おばあさんに会った事を家に帰って母親に話すと 裏山に人は棲んでいない と母親が云った

だってオハギごちそうになったもん と私が云うと蒼ざめた顔で これからは一人で裏山に登らない様に云った

家の前の道で遊んでいた時見知らぬ女の人に声をかけられその人の後をついて行った

気がついたら山の中に来ていた 

女の人は山の中の一軒家に私を連れて入った

家の周りを背の高い数多の孟宗竹が囲んでいる

庭は草がぼうぼうと繁っており歩く事も出来ない

庭の中頃に井戸があるのが微かに見える

家の中の物入を覗くとそこには白骨化した死体があった 

女の人が私に猫のぬいぐるみをくれた 

それを家に持って帰り母親に見せると怖い顔をして 死んだ猫を拾ってきたらいけません と強い口調で云った 

私は女の人にもらったことは黙っていた

私には妙な癖があった 

それは夢から覚めても現実に戻れず夢の続きを追いかけてさ迷うのである 

道を歩いていると何時の間にか見知らぬ処へ来てしまうのである 

自分の住む町から遥か遠くの場所をさ迷っている事もあった 

どうやって来たかもまったく思い出せないのである

未だにこうして夢遊病者の様にさ迷うのである 




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