復讐

文字数 1,245文字

 私を散々いじめ抜いた担任の一人息子として、私は生まれた。
 私には、過去世の記憶が明確にある。七歳の頃に、その事に気が付いた。
 私は中学二年生の時、クラス全員からのいじめに耐え切れず、担任に相談した。若い担任は、私の云う事に、全く耳を貸さなかった。母子家庭で生活保護受給中の、精神疾患で働けない母親や私を蔑み、愚弄していたのである。いじめを止めるどころか、私が担任にチクッた事を、いじめの主犯格に漏らした。担任は一緒になって、私をいじめたのである。私は何よりも、この担任の事が許せなかった。
 私はその後、復讐を誓い、自殺した。担任はじめ学校は、いじめの事実を隠し、自殺は本人の個人的問題と、片づけた。
 私は希望通り、担任の子として生まれ変わったのである。私は以来、長い年月をかけ復讐していった。
 小学校時代から悪さを続け、何かあれば親が出向いて、謝罪する場面を作った。親にとって、世間体の悪くなる事をやり続けた。学校でのルール違反、授業妨害、さぼり、万引き、ケンカ等。その度に父親が謝罪に行く。これ程愉快な事はない。小学校高学年になり、私は札付きの悪になっていた。
 中学に入って、体力の出来た私は、父親に暴力を振るう様になった。学校では、不良グループのボスとして、のし上がっていた。
 母親は、毎日繰り返される私の非行に耐え切れず、精神を患い入院した。
 私は到頭来るべき時が来たと、武者震いをした。
 父親を家に閉じ込め、学校をさぼった私は、一日中暴力行為を続けた。父親のカードローンで金を引き、自分だけ食事をし、父親には一口も食べさせなかった。骨と皮になっていく父親を見る事が、たまらなく愉快だった。父親が少しでも口答えしようものなら、殴り蹴り、手が痛くなったら竹刀で叩いた。顔が腫れ上がり、血や倦みが出た。
 父親が一度目を離したすきに、脱出を図った事があり、以来、手錠、足錠をかけ、逃げる事が出来ない様にした。暴力行為の後に、父親の意識が遠ざかりはじめると、真冬にも関わらず氷水を頭から浴びせた。一応死なない様には、注意を払った。簡単に死なせてやるものかと思った。
 あまりの辛さに、ある時父親が、
「どうしたら、許してくれるんだ?」と縋りつく様な目で、懇願したので、
「オマエは、オレの事を、覚えているか? オマエに散々いじめ抜かれて殺された、山田一郎の事を。覚えてないとは云わせない。そうだよ、オレはオマエに殺された山田一郎の生まれ変わりだよ。オレは、死ぬ前に、オマエに復讐する事を誓った。そして、仏さんか、神さんか、よくわからねえが、こうしてオレの願いを叶えてくれたんだ」と私が云った。
 父親は驚いた顔で私を見た。
「そんな事がありえないと思うだろうが、オレには、過去世の事がわかるんだよ。だから、山田一郎が味わった苦しみを、オマエに何倍にもして、返してやっているんだ。わかったか!」と叫んで、担任の顔を、思い切り蹴とばした。
 担任は、目を白くして、泡を吹き、醜いゴキブリの様な姿で、死んだ。
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