人妻の人魚
文字数 666文字
私は砂浜にいる。砂浜に座り、ぼんやりと海を眺めている。
真っ暗な空には月も星もなく、どこまでが海で、どこからが空か分からない。
黒い海には音もなく、打ち寄せる波もない。
砂浜の周辺には山があるのかもしれないが、暗くてよく見えない。ただ山が存在するような気配がするだけである。
私の隣に人魚が座っている。
人魚は暗い顔をしたクジラの様にでっかい人妻だった。生きていることが、退屈だと言わんばかりに、いつもため息をついている。
私たちは付き合い始めて間もない。
私にも妻子があるが、人生に疲れて、毎日死ぬことばかりを考えていた。
「ボクに、足りないものは何だろう?」
と人魚に聞くと、
「糖分じゃない?」
と言うので、
「そういうことじゃなくて……。それにボク、糖尿の境界型だよ」
と言うと、
「糖分を取るからといって、世界中の生き物が、みんな糖尿病になるとは限らないわよ」
と人魚が言うので、
「本当かな?」
と言うと、
「だってワタシ、栄養士の資格持っているのよ」
と人魚が言った。
「じゃあボクが、糖尿病になって死んでもいいのかい?」
と言うと、
「別に、ワタシはあなたが本命じゃないから、あなたがどうなったって平気よ」
と人魚がつまらなそうな顔をして言った。
「本命って、誰だよ?」
私がムキになって言うと、
「ケイコちゃん。あの子本当に可愛いから、好きよ」
ケイコはブタが人間になったような女、というか、人間のようなブタだが、私の元カノだった。
こうして私は、人魚が私の元カノとも付き合っていることを知ったのだが、人魚との関係は今も続いている。
真っ暗な空には月も星もなく、どこまでが海で、どこからが空か分からない。
黒い海には音もなく、打ち寄せる波もない。
砂浜の周辺には山があるのかもしれないが、暗くてよく見えない。ただ山が存在するような気配がするだけである。
私の隣に人魚が座っている。
人魚は暗い顔をしたクジラの様にでっかい人妻だった。生きていることが、退屈だと言わんばかりに、いつもため息をついている。
私たちは付き合い始めて間もない。
私にも妻子があるが、人生に疲れて、毎日死ぬことばかりを考えていた。
「ボクに、足りないものは何だろう?」
と人魚に聞くと、
「糖分じゃない?」
と言うので、
「そういうことじゃなくて……。それにボク、糖尿の境界型だよ」
と言うと、
「糖分を取るからといって、世界中の生き物が、みんな糖尿病になるとは限らないわよ」
と人魚が言うので、
「本当かな?」
と言うと、
「だってワタシ、栄養士の資格持っているのよ」
と人魚が言った。
「じゃあボクが、糖尿病になって死んでもいいのかい?」
と言うと、
「別に、ワタシはあなたが本命じゃないから、あなたがどうなったって平気よ」
と人魚がつまらなそうな顔をして言った。
「本命って、誰だよ?」
私がムキになって言うと、
「ケイコちゃん。あの子本当に可愛いから、好きよ」
ケイコはブタが人間になったような女、というか、人間のようなブタだが、私の元カノだった。
こうして私は、人魚が私の元カノとも付き合っていることを知ったのだが、人魚との関係は今も続いている。
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