愚かな市長 PART3

文字数 2,220文字

 愚かな市長が溜息を吐いた。
(もう半年も女とやっていない、女子職員が最近おれを避ける、いったいどうしたことか?)
 しかしその溜息が口から出きらないうちに、
(おれ様は市長だよ! きみたちはおれ様の部下なんだからね、云うことを聞かなければきみたちみんな干されるってこと解ってないんだなぁ、おれ様の女になりゃきみたちは永遠にいい思いが出来るんだぜベイビィ、きみたちだってセックスしたいんだろう? おれ様に抱かれりゃ気持ちいい思いが出来るんだからね、人生ってすべてがギブアンドテイクだからさぁ、そこんとこヨロシク)
 バカ市長の愚かな妄想が続く。
 二期目に突入し、おれって偉いんだと勘違いをしている市長は、相変わらず執務中も隙あらば若い女子職員のことばかりを考えている。今度誰を落とそうかとそんな下劣なことばかりを日がな一日考えているのである。
 市長室の机の前方に山と積まれた未決済文書を退屈そうに眺めながら、さてどの文書を見てやろうかと考える。起案文書の内容何てまともに読みはしない。起案者が若い女子職員かどうかを職員名簿でチェックした後、若いとなると電話で市長室に呼び、起案文書の内容を直接聞く。女子職員がブスだったり超デブであったりしてタイプでないと、説明を最後まで聞かずに帰す。しかしタイプであれば、文書の内容を上の空で聞いた後、根ほり葉ほりの身上調査に取り掛かる。
 最後には、必ず食事に誘う。
「今日仕事が終わってから、ちょっと食事でもとりながらこの件の話をもっと詳しく聞きたいけど、いいかね?」
 と市長がすました顔で云う。採用二年目の純情そうな若い女子職員は、市長から食事に誘われたことに驚き、
「えっ、今日ですか?」
 と困惑の表情になる。
「何か、用事でもあるの? 嫌なら無理にとは云わないけどね、この決裁文書を通したいんだよね? おれもさぁ、今超忙しいんだけど、ことによっては特別に決裁してもいいと思ってるんだよね」
 とバカ市長がもったいぶって話す。
 純情そうな可愛い顔の女子職員は、この決裁文書が国庫補助の対象事業で早く申請しなければ今年度の対象から外されてしまうと気が気じゃない。しかしそれにはまず市長の決裁が必要である。今までも同じ課の若手男性職員が市長の決裁が下りずに困っている話を聞いていたので、つい市長の誘いに乗ってしまったのである。
 市長は男性職員や不細工な年配の女子職員の起案した文書は、決裁せずに後回しにするのである。市長の決裁の優先順位は、採用五年以内の若い女子職員と決まっている。市長はあきらかに権力を使って、女子職員を片っ端から自分の女にしていく努力を惜しまないのである。
 若い真面目で純情な女子職員は、自分の仕事を早く片付けてしまいたいし、遅くなれば上司からはまだかまだかとせかされるし、若いうちから仕事ができない奴と思われたくないなどの考えが頭をよぎるし、そんななんやかんやのプレッシャーがあり、そのためにも市長の決裁が下りる下りないが重要なのである。
 バカエロ市長は、そこのところを逆手にとって、決裁してほしけりゃおれの女になりなさい、と云わんばかりに若手女子職員に迫るのである。しかしさすがにみんながみんなそんなバカエロ市長の脅しに屈するとは限らない。
 なかには誘いを断ったばっかりに、
「あっそう! じゃあ、次の異動ではきみにはすまんけど離島に飛んでもらうからね」
 と嫌がらすのである。そうやって市長の誘いを拒んだ女子職員は未だに離島の支所から帰ることができない。
 この手を使いバカエロ市長は、次々と若い真面目な純情女子職員と関係を持ったのである。
 市長の女好きは最早病気であり、一度関係を持つと自分が飽きるまで延々と関係を迫る。変態市長は純情若手女子職員にオナニーグッズを使わせ、それをスマホで撮影し、女子職員が誘いを断ると、バラスと云ってどこまでも関係を強要するのである。
 市長がこんな低能である場合、今までは副市長が少しはまともで市長に進言するという構図が出来ていたが、今の副市長は市長同様のバカでおまけに超変人であるから、何ともならない。
 市長にアドバイスするどころか、市長は市長、おれは副市長だから、そんなことどうでもいいんじゃ、おれは副市長と云う肩書さえありゃそれでいいんじゃ、文句ある、っていう態度のバカだから、話にもならない。
 こいつの頭の中にあるのは、何とか任期を無難に過ごすことしかない。任期を全うすれば、副市長室におれ様の写真は永久的に飾られているし、未来永劫おれ様は副市長としての名声を浴びるのであるオホホホ、何て腹の中で思う糞クソくそなのである。変変変のこいつが今では人事権を握っているのであるから、職員も嫌嫌ながらこんなバカの変人にもへえへえして忖度するのである。
 それをいいことに、バカの変人は、
「きみたちもおれ様の云うことをちゃんと聞いてさえいればね、ちょっとぐらいは良いポジションにつけてあげるから喜びなさい、まぁきみたちがおれ様と対等に話をするのは百年早いんだけどね、おれ様から声をかけられただけでも、きみたちは光栄と思いなさいよ、きみたちはねおれ様のことをいつまでもいつまでも仰ぎ見なさいねフンフン」
 何て調子に乗る。本当に困ったバカで変人である。
 バカでエロの変態市長とバカで超超変人の副市長が今のポジションにしがみついている限り、本市に明るい未来などあるわけがない。

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