テング

文字数 569文字

 ワタシは今、空を飛んでいる。
 ワタシは山の中で、長い間テングになる修行をした。師匠のテングから、空の飛び方を教わったのである。
 空中に浮かんだときバランスが取りにくく、苦労をしたが、それに慣れてくると飛ぶことは、そんなに難しいことではない。
 空を飛ぶことは魂の解放と同じだ、と有頂天になった。どうやらワタシはテングになっているようだ。
 山から山へと飛んでいると、空の主のような獰猛なタカがやってきて、
「ワシらの領域に勝手に入ると、オマエは襲われるぞ」
 と忠告してきた。
「そんなこと言っても、空を飛ぶことは自由だろう」
 とワタシが言うと、
「いいか、今ので、一回目の忠告だ。次に言うことを聞かないと、オマエを襲うからな」 
 と脅す。
「じゃあ、その領域とやらを教えてくれ」
 と言うと、タカが山の尾根に沿った領域を教えてくれたが、細かすぎていっぺんには覚えられない。
「そんなに細かく分けなくても、みんなが自由に飛んだらいいんじゃないのか?」
 と言うと、
「これは太古から定められておるルールじゃから、今更文句を言ってもはじまらない」
 とタカが言った。
「じゃあ間違えて、その領域に入った場合はどうなる?」
 とワタシが聞くと、
「その時は、戦闘になる」
 とタカが言う。
 ワタシはせっかく空を自由に飛べるようになったのに、どこの世界もややこしいと思った。
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