白い着物姿の女たち

文字数 782文字

 わたしは夜、ひとひとりがやっとあるける山道を、歩いている。
 とちゅう、白い着物姿の女がくだってきたので、よけようとしていると、女は歩をゆるめもせずすすんできて、わたしにぶつかりそうになったが、風のように通りぬけた。
 しばらく歩くと、また白い着物姿の女とすれちがった。
 さっきの女と似ているきがする。
 また歩いていると、やっぱり白い着物姿の女とすれちがった。
 わたしは女に、うえでなにかあったのですか、とたずねたが、女はきこえないように、くだっていった。
 ふしんにおもいながら歩いていると、また白い着物姿の女にあったので、いよいよおかしいとおもい、女に、うえでなにかしているのですか、ときくも、やっぱり女はきこえないように、くだっていく。
 わたしは、これはぜったい、あやしいとおもった。
 しばらくまた歩いていくと、白い着物姿の女が歩いてきたので、女のまえにたちふさがった。それでも女は、風のように通りすぎていく。
 わたしはあやしいとおもいながらもそのまま歩いていくと、白い着物姿の女が歩いてきたので、からだをつかもうとしたが、風のようにつかめない。
 わたしはのぼるのをやめ、くだることにした。
 くだっていると白い着物姿の女がのぼってきた。
 はじめにみた女のようにおもうが、そうでもないきもする。
 わたしはとつぜんおそろしくなり、きびすをかえした。
 するとくだってくる白い着物姿の女にもはちあわせになった。
 わたしはその場からうごけず、しびれたようにたちすくんでいた。
 女はしずしずとわたしのまえを通りすぎていく。
 そのながれはたえることがない。
 いっていのかんかくをたもちながら、白い着物姿の女がすすんでいる。
 わたしはふもとにある墓地までくだってくると、そこで白い着物姿の女が、墓のなかにきえていき、やがてまた姿をあらわすようすを、背筋がこおるおもいでみていた。

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