第七十九話、話し合い
文字数 2,435文字
アリゾム山山岳部隊は山の谷間に隠れるように潜んでいた。
ファバリンは包帯を巻いた右胸を押さえながら言った。ゴキシンに刺された傷は、深く、肺にまで達していた。ファバリンは意識を失い、三日ほど寝込んだ。止血はしたが身動きは取れない。
副司令官のエンペドが言った。
デノタスが言った。
ダナトリルは、のろのろと進んでいた。国軍の指揮官として千人の兵を率いアリゾム山に向かっていた。
モーバブはダナトリルの家臣である。
「今更、ドワーフ倒したって手柄にはならないよ。もう戦の趨勢は決まっているんだからさ、僕らの仕事は、アリゾム山を押さえておくことだよ。ぶっちゃけ、バリイ領から、アリゾム山を奪い取っちゃうって、話。だから、無理せず、ゆっくり移動して、その間ドワーフとバリイ領の兵がつぶし合っていてくれた方が都合がいいわけよ」
「そう、汚いんだよ。ドワーフと戦っている間に、自分の国の領地をかすめ取ろうって算段だ。ははっ、財布の中で小銭が転がっているようなものだね。中身はちっとも、変わらないって言うのにさ。僕らの役目は、戦後に備えてアリゾム山に拠点を作るのが仕事だよ」
ペックスは報告を聞き、驚いた表情を見せた。
モディオルからの伝令は答えた。
伝令はペックスの営舎から出た。
ペックスは上を向いた。
ザレクスは眉をしかめた。
ベネドは言った。
最悪、二万のドワーフが来る。
ベネドは頭をかいた。
ザレクスは暗い顔をした。
ベネドは首をかしげた。ドワーフの王政についてはよく知らない。
ザレクスは深々とため息をついた。