第五話、ドワーフの王

文字数 1,169文字

 ギリム山の坑道深く、ドワーフの王国があった。およそ八百年前、ドワーフの一団が、ギリム山に住み着いた。北東にエルフの住む森があったが、まだ、付近には人は住んではいなかった。ギリム山の鉱山にはたくさんのドワーフが集まった。やがてそこは国になった。


「グラムから報告がありました。少しトラブルがあったものの、食料の備蓄は進んでいるようです」


「そうか」


 ドワーフの王、ドルフは答えた。

 ドルフは八百年前最初にギリム山に住み着いた一団の子孫である。


「ただやはり、むつかしいかと」


「だろうな、もう少し時間があればよかったのだが」


 浮かぬ顔をした。


「まだ迷っているんですか」


「そりゃ迷う」


「どちらにしろ、強行派の族長はやる気ですよ。軍事訓練を地下や地上で行っています。あれを押さえるだけの、力は残念ながら」


「わしには無いか」


「ええ、まぁ」


「若い者は血気盛んじゃのう」


「グルミヌ殿やベリジ殿は結構な年なんですがね」


「頑固じじいどもめ」


「仕方ありません。王の権限を強化してこなかったのは、陛下の責任です」


「痛いことを言う。だが、頭が重いと首がこる。王など、飾りでいい。その考え方は今でも間違っているとは思っておらん」


 にらみつけた。


「さようで」


「責任だけは重いのだがな」


「同情します」


「勝手に戦われるよりはましか」


「ええ、強行派が何の策も無く、勝手に戦っても、勝つ見込みはありません。力を合わせねば勝てません」


「だろうな。ほっとけば、どこまでも攻めていきそうだしな」


「それはそれで見たい気もしますが、最も大切なのはやめどきとやめ方です」


「それをわしがやらねばならんのだな、できるかの」


「やらねばなりません。そのためにも主導権を握らなければ、なりません」


「わしが始めなければ、皆言うことを聞かぬということか」


「心中お察しします」


「何とか止められぬものか」


「我々の力で止められるか微妙です。止めようとすれば、仲間内で殺し合わねばなりますまい」


「それはいやだのう」


「ええ、それだけは避けなければなりません」


「仲間内で殺し合うのがいやだから、人を殺せというのか。身勝手な話だな」


「ええ、その通りかと」


「反戦派の方はどうだ」


「がんばってはいますが、力がありません。彼らは何というか、話し合いで解決しようとしますので、族長達と気が合わないのです」


「だろうな、語り合うより、殴り合うのが、ドワーフというものだ」


「話し合いなど、無視されたらおしまいですからな」


「押さえられる方を押さえるしか選択肢はなしか」


「内乱を避けるためにはそれしか無いかと」


「やるからには、勝たねばならん」


「ええ、勝ちましょう」


「時が欲しいのう。もう少し時間があれば、別の道もあったかもしれん。あの男の話をもっとしっかり聞いておくべきだった」


「あの男とは?」


「一応友人だよ。古いな」


 ドルフは笑った。


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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