第三十七話、休息

文字数 1,609文字

 暗くなり、ドワーフは兵を引いた。レマルクの軍はドワーフの軍の少し離れた北側で野営した。


「誰か知らんが、石垣を作ってくれた人間に感謝せねばな」


 リボルは言った。石垣は所々ドワーフによって破壊されたが、ドワーフの侵入を許さなかった。


「ドワーフ避けになるとは、ここを作った牧場主も考えてはいなかったでしょうな」


 スタミンは笑った。 


「うむ、あとはレマルクが背後から奴らを蹴散らしてくれれば、この戦、勝ちが見えてくる」


「奴ら馬に対応できていませんでした。一部を除いてですが」


「あの傭兵か、無茶しよって、戦意がない傭兵も困るが、ありすぎるのも困るな。あの男の処分はどうする」


「傭兵隊の指揮はもう無理でしょう。別のものにまかせて、あの男はとりあえず私のところで預かるということでどうでしょうか」


「それでいい」


 補給と部隊編成の話を少ししたあと、リボルとスタミンは分かれた。








「やっちまった」


 バナックは落ち込んでいた。馬に乗り暴れ回っているうちに、自分が物語の英雄か何かになったような気分になってしまい、周りが見えなくなってしまった。結果、預かった兵を半数近く失ってしまった。顔を上げて周りを見ることができなかった。

 背後に人の気配がした。


「よう、間抜け、しっかり落ち込んでいるようだな」


 スタミンがバナックの横に座った。


「すいません。先ほどは、助けていただきありがとうございました。命拾いしました」


 平謝りした。


「やっちまったことは仕方ない。おまえさんの処分だが、傭兵隊全体の指揮は取り上げる。おまえとおまえさんのところの傭兵隊は私の指揮下に入れ」


「はい」


 まぁ、元気出せと、スタミンはバナックの肩を叩き、他の兵の集まりに向かった。








 ドワーフの北側、レマルクの陣、兵と馬は休んでいた。


「年じゃな、しばらく動けそうにないわ」


 ゴプリはプレドに薬草を背中に貼って貰っていた。

 ゴプリはドワーフ相手によたよたと八人ほど倒した後、へろへろになって動けなくなった。その後はプレドの背中におぶわれ逃げ回った。


「いやー、しかし大活躍でしたね先生」


 ゴプリの怪しげな槍さばきに、プレドは感銘を受け勝手に師と仰ぐことにした。


「まぁな、あと十歳若ければ、あの倍ぐらいは敵を葬れたのだがな」


「さすがです先生、私も見習いたいものです」


「よい心がけだ。気が向けば教えてやろう」


「ありがとうございます」


「まずは、当てることよ。当ててからさすと思え」


 ゴプリは身振り手振りをまじえながら、戦場における槍の極意を早速教え始めた。それをプレドは真剣に聞いた。


「なるほど、次の戦の時は試してみたいと思います」


「うむ。やってみなさい。実戦に勝る修練はない。だが、ベリジとか言うドワーフとは戦わん方がいいだろうな」


「なぜです」


「強いからだ」


「先生でも勝てませんか」


「うーん、やってみなければわからんが、勝てる気はせんな。槍が刺さるイメージがせん。あれが来たら逃げ回るが吉じゃ。うちの歩兵の指揮官も、それを感じたんじゃろう。逃げたのは正解だ」


 途中から歩兵を二つに分け、ベリジの部隊から逃げる部隊と、ムコソルの部隊を攻撃する部隊と役割を分けていた。ゴプリとプレドはベリジから逃げ回る部隊に入っていた。


「逃げるのも槍の極意よ。相手の攻撃が届かぬところで、ちくちくやればよい」


「なるほど」


 プレドは槍を握りしめうなずいた。








「まさか、こんなところに石垣があるとはのう」


 ドワーフの王はドルフは、小麦とふかしたジャガイモをバターと練り込み、焼いたものをほおばっていた。ジャガイモのほっこりとした食感にバターの塩味がいい。


「いやな高さですな、多少の犠牲はやむを得ないでしょう」


 ムコソルは言った。


「そうだな、そちらの方はどうだ」


「やはり馬はやっかいです。馬でかき回され歩兵で押し込まれています。馬は、ここで、できる限り減らしておきたいところです」


「そうか、頼んだぞ」


「承りました」


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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