第七十話、ドワーフの砦
文字数 1,512文字
領主とケフナが戦後のドワーフとアリゾム山の扱いについて話し合いをしているあいだも戦いは続いていた。
メロシカムは無くなった左腕の代わりに付けている盾に身を隠す。クロスボウを持ったドワーフの兵が防壁の上からうちかえす。人間の弓兵は盾に身を隠す。木片が飛ぶ。木盾に矢が突き刺さる。距離と角度によっては、鋼の鎧を貫く威力がある。
重装歩兵隊が壁に取り付き、西側の壁を全体的に崩していた。西側の扉はすでに壊されており、土嚢が積み上げられていた。
大盾を持った大型のリザードマンが壁に近づいた。盾の下半分は鉄の板が張られている。
ドワーフはリザードマン目がけ矢を放つ、盾でふさがれる。メロシカムも石を投げようとするが、人間の弓兵の斉射により動きを止められる。大型のリザードマンの身長は三メートル前後ある。壁は二メートル程度しかないため、大型のリザードマンの方が大きい。盾を前に、槍を持ち上げ、壁の上にいるドワーフの兵を叩く。まともに当たった兵はその場につぶれるか、はじき飛ばされる。だが、ミスリルの鎧を身につけたドワーフは起き上がる。
近づいてきた大型のリザードマンめがけメロシカムは石を投げつけた。大型のリザードマンが壁になっているおかげで矢に狙われない。盾の間をすり抜け、リザードマンの顔面に当たる。歯が飛び、のけぞる。ふらふらと後ろに倒れる。
大型のリザードマンの後方から、梯子を持った中型のリザードマンがあらわれた。次々に梯子を壁に掛ける。
中型と言っても二メートル前後ある。二、三歩梯子をのぼっただけで壁よりも高くなる。はしごを外そうとするが、中型のリザードマンの背が高いためドワーフがはしごを外そうと近づく前に槍の射程圏内に入る。ドワーフは突かれ、壁の上から転がる。中型のリザードマンは次々に壁の内側に入る。
他の壁でもリザードマンや人間が壁を乗り越えてくる。ドワーフとの乱戦になる。こうなるとドワーフの方が強い。人間とリザードマンは無理に攻めず、拠点を確保しながら壁を崩すことに専念する。壁の資材が抜かれていき、所々半壊していく。
半壊した壁の向こうにハンマーを持ったドワーフが立っていた。ドロワーフである。
人間とリザードマンの兵におびえが広がる。
ドロワーフはハンマーを高々と上げ、崩れた壁を乗り越え外へ出た。
ハンマーを振るう。
人間の歩兵に当たる。
斜め上から振られたハンマーは、歩兵の腕に当たり、その腕をへし折り、半回転する。
一斉に兵が退く。
ダリムは命じた。ドワーフが土嚢を半壊した壁に向かって放り投げる。
ドロワーフは奇声を発しながら、ハンマーを振る。当たれば死ぬ。ドロワーフは攻撃を兜で受け、時に避けながら近づく。体がぶつかりそうな距離で、ハンマーを振るう。当たる。おびえが広がる。
半壊した壁が埋まる。
ダリムが土嚢の上から、槍斧を逆さに棒の部分をドロワーフに向かって伸ばす。ドロワーフはそれを掴む。ダリムは斧槍でドロワーフを持ち上げ壁の外から中へつり上げた。
赤毛をかき笑った。
日が暮れるまで攻防は続いた。
血と土埃、木材と石材を組み合わせた壁は、所々土嚢に変わり、まともに動けるドワーフは百人程度に減っていた。それでも、ドワーフの砦は崩れなかった。