第五十五話、リザードマン対ドワーフ2

文字数 1,905文字

 ドワーフから見て右側、中型のリザードマンと人間の兵が、ドワーフの側面を突こうとしていた。盾を持ったドワーフの兵がそれに対応していた。リザードマンが槍で盾を持った兵に攻撃を加えている間に、人間の兵が、すり抜けようとするが、ドワーフの軽装歩兵隊がその動きを封じた。

 ドワーフの右側を突いたことにより、大型のリザードマンを攻めるドワーフの猛攻は弱まるとベネドは考えていたが、あまり変わらなかった。


「普通、気にするよな」


 ベネドはあきれた。味方が側面を突かれたら、普通は気になる。原因はおそらく先頭で暴れ回っているドワーフであろうと推測できた。他のドワーフもつられているのだ。


「べらっしゃ!」


 ハンマーを振り抜いている。三メートルあるリザードマンが膝をくの字に曲げ一回転している。


「あのドワーフか」


 立てこもるドワーフに悪口を言い挑発したことがあった。その時一人飛び出してきた赤毛のドワーフのことをベネドは思い出した。

 大型のリザードマンの隊列が大きく崩れそうになっていた。今は無理をするような状況ではないので、撤退させようかとベネドが考えていたところ、ルドルルブがドロワーフの前に出た。


「おう、強そうじゃねぇか」


 ドロワーフが笑った。ルドルルブは槍で突いた。ドロワーフはハンマーの柄で受け止めた。少し刺さったそれを引き、すぐに二撃三撃と突いた。ハンマーの頭に当たり、削るように火花が飛び散る。槍が高々と上がる。ドロワーフ少し前に出る。槍が振り下ろされる。ドロワーフはハンマーの柄を上に槍を受け止めた。体が沈む。


「おう、こりゃすげぇ」


 ルドルルブは再び槍を振り下ろす。ドロワーフは受け止めながら、前に進む。


「くそ」


 ベネドは舌打ちした。リザードマンの司令官を失えば、今後の戦いにおいて、かなりの痛手になる。ベネドは人間の歩兵と中型のリザードマンを強引に進ませた。互いに犠牲が出る。


 圧力が増えた中型のリザードマンと人間の攻撃をなんとかしのぎながら、そろそろ潮時ではないかと、トンペコは、ドロワーフの様子を見た。戦いに熱中しているようで、引く気配はない。

 砦を見ると、メロシカムが手を振り、退却の合図を出した。

 トンペコはその場を部下に任せ、ドロワーフの元へ走った。

 ドロワーフは槍を防ぎながらじりじりと、ルドルルブの足元まで近づいた。ルドルルブは槍を短めに持ち、突きを入れた。


「ほい」


 ドロワーフは槍を兜に当てはじいた。ドロワーフの鎧兜は厚めの鋼でできている。ミスリル合金の鎧兜では、重みがなくて腰が回らない。と、断った。

 回る。ハンマーで思いっきりぶったたく。ルドルルブのもっていた盾にひびが入る。ルドルルブは後ろに下がった。


 もう一撃と、ドロワーフは一歩前に進んだところで止まった。何か来る。そう思った。後ろに飛んだ。何かが落ちてきた。ドロワーフの顔をかすめ地面にたたきつけられた。槍、ではない。尾である。

 ルドルルブは背を向け、尾を高々と上げたたきつけた。密集しているので尾を振るうスペースがないため、体をひねり尾を上にあげた。尾は、なめした水牛の皮を巻き付け、先端には尾球という、フックがついた半円状の金具がある。フックに尾の先端を引っかけ水牛の皮で巻き固定している。


「いーもん、もってんじゃねぇか」


 ドロワーフの頬に小さい切り傷ができていた。血が垂れた。


「左だ! いったぞ!」


 メロシカムが大声をだした。

 プロフェンの騎馬隊が大型のリザードマンを攻めているドワーフの側面を突いた。数人のドワーフがはじかれるように倒れた。


「まずい、ドロワーフさん、早く撤退を」


 トンペコがドロワーフの肩をつかんだ。


「いいところだ。邪魔するな」


 ドロワーフはトンペコを振り払った。


(いけるかもしれない)


 ベネドはそう思い始めていた。右側のドワーフも崩れ始めていた。このままドワーフを左右から押しつぶせば、後は砦に残るドワーフと重装歩兵隊に対応しているドワーフのみである。檄を飛ばした。


 メロシカムが兵を率い、砦の外に出ていた。クロスボウで騎馬隊を牽制している。

 ドロワーフ以外のドワーフは、撤退の指示に、じりじりと後退しつつあったが、ドロワーフが前に行くので、その動きは遅かった。


「撤退してください!」

 トンペコはドロワーフの体にしがみついた。

 ルドルルブの尾打が飛んできた。ドロワーフはハンマーで、尾球をはじいた。 


「ちっ」


 ドロワーフは舌打ちした。


「ドロワーフさん」


「引き上げた!」


 ドロワーフは左手にトンペコを抱え、右の肩にハンマーを担ぎ、やれるものならやってみな、と、幅の広い、ぶ厚い背中を存分に見せつけ引き返した。 


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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