第二十二話、トレビムの会議
文字数 4,421文字
ドロワーフは自軍の陣地で方々に頭を下げていた。怒る者もいたが、笑って許す者が大半だった。五十人近くのドワーフの兵が亡くなった。遺体の埋葬はすべてドロワーフが行った。
ダリムが食事を取りながらつぶやいた。騎兵を百人程度殺した。騎馬隊の隊長を一人殺せたのは非常に大きかった。
メロシカムが答えた。餅米と鶏肉をエールで煮込んだ料理を食べていた。
密集して、穴が空けば横のもの、後列のものがすぐに穴を埋めた。盾で攻撃を防ぎながら執拗に槍で突いてきた。
王都トレビム、王と閣僚が館の一室に集まっていた。掃除は行き届いてはいたが、古い部屋だった。
王であるルミセフが言った。
外務大臣のヨパスタが言った。
内務大臣のケフナが言った。
財務大臣のオランザが顔をしかめた。
軍事顧問のペックスが言った。
財務大臣のオランザはふてくされたような顔をした。
王は言った。
トレビプトという国は、各領主ごとに独立性が高く、王は絶対的なものではない。ただ外交や軍事などに対してはある程度の権限が与えられている。戦争時、トレビプトの大領主は王の命令によって兵を出すことを義務づけられている。
「国という概念自体、人間のものですから、他の種族にそれが当てはまるかというと、微妙なところでして、たとえば、ゴブリンが集まって、その中に王様がいても、それを国だとは誰も思わないでしょう。群れのようなものとしか認識されません。それに、バリイ領内に国があるというのも、違和感がありますので、少し避けていた部分があります」
王はうなずいた。
「ドワーフの群れが、バリイ領で暴れているから、各領主は軍を出せ、と言われて、出してくれるかどうか、どこも、火の車です。軍を出すというと相当の負担になります。なんだかんだ理屈をつけて先延ばしにして出したがらないでしょう」
内務大臣のケフナは腕を組み困ったような顔をした。
情報部のトパリルが言った。
王は身を乗り出した。
それぞれ驚きの表情を見せた。
「ギリム山が噴火するということで、ドワーフの長達の間で、議論が起こったそうです。最終的には、人に助けを求めるか。人と戦いその土地を奪うか。この二つに分かれたそうです。当初はドルフ王も人間に助けを求める避難派だったのですが、侵略派に押し切られたようで、避難派の長男一派をとらえ反対意見を封じ込めたようです」
外務大臣のヨパスタがトパリルに問うた。
王は険しい顔をした。
「噴火の件も彼らが我々に言ってきたわけではありません。ドワーフの商人が言っているだけです。ドワーフの王が山が噴火するから助けてくれなどとは、いってきていないのです。こちらから土地の提供を申し出れば、ドワーフに恐れて土地を提供したと言われても仕方が無いかもしれません」