第十五話、アリゾム山

文字数 1,068文字

「なんだよ。もう」

 聞いていたのとは違うではないか。ドレント家の三男であるズッケルは二日酔いで痛む頭と執拗な吐きげを感じながらも、アリゾム山の木々が生い茂る斜面を歩いていた。アリゾム山はエルリムから離れた南西にある山である。


「規律の緩い部隊だって聞いていたのに」


 ズッケルと同じ新入隊員のブータルトが言った。

 ズッケルもそう聞いていた。確かに緩かった。新入隊員入隊祝いだと称し、隊員全員で朝の三時まで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ、ずいぶん楽しい部隊に配属されたと、寮に帰って眠っていたら、朝五時にたたき起こされ、訓練だと言われた。

 二日酔いと寝不足でへろへろな状態で、重さ二十キロの背嚢を背負い、山の道なき道を、延々と歩かされた。話が違うと言いたくなっても仕方がない。


「確かによ。うちの隊は規律は緩い。服装も、支給品着ていたらなんでもいい、髪型も自由だ。飲む打つ買う全部自由だ。規律なんて、あってないようなもんだよ。ただなぁ、訓練だけはきっちりやるんだよ」


 先輩の隊員がズッケルと同じく脂汗をかきながら言った。


「まじですか」


「ああ、そうなんだよ。隊長はそこんとこだけは、まじめなんだ」

「おーい、新人ども、遅れたらそのまま置いてくからな。熊の餌になりたくなかったら遅れず付いてこいよ」


 隊長のデノタスは振り返って言った。


「うっ、なんで隊長はあんなに元気なんですか」


 一番酒を飲んでいたはずだ。


「知らねぇよ。いつもあの人、ああなんだ。おおおええ」


 先輩隊員は吐いた。


 

 

 


 トレビプト国、王都トレビム、国王の直轄地は、王都トレビムとその周辺、あとは、飛び地がいくつかあった。各領主からの税があるものの、自由に使える金では無い。主たる産業も無く、海にも接していないため、経済的にはあまり恵まれていなかった。ただ、さすがに人の数は多かった。

 トレビム郊外に塀の高い屋敷があった。


「旦那様、ギリム山のグラムと名乗るドワーフが面会を求めております」


「ほう、ギリム山の」


「いかがいたしましょうか」


「会おう。応接室に通してくれ」


「かしこまりました」





 魚が運ばれていた。サロベルの市場である。そこから少し離れた場所に看板が掛けられていた。

「なんて書いてあるんだ」


 漁師のプレドは、知り合いを見つけ声をかけた。プレドは字が読めなかった。

「ああ、バリイの領主様が兵を募集しているんだよ。ドワーフが攻めてきたとかで、戦争になっているそうだ」

 その話なら、プレドも聞いたことがあった。ギリム山のドワーフが町を燃やしたとか。


「兵隊か」


 プレドは思案下につぶやいた。


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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