第五十三話、戦支度

文字数 1,388文字

 ザレクスはドワーフの砦から見て西側から重装歩兵二百を出し、北からルドルルブ率いる四百のリザードマンとベネド率いる百人の歩兵を出すことに決めた。プロフェン率いる騎馬隊五十は遊軍として好きに動かすよう命じた。四百のリザードマンはベネドの指揮に入ることになった。


「いいですか。ルドルルブさん隊列を維持することを心がけてください」


 ベネドはリザードマンに隊列を組むことを教えていた。


「了解した」


 リザードマン達はまっすぐ列になった。横から見るとリザードマンは長く大きく見えるが、正面から見ると、リザードマンは肩幅が狭く意外と細く見えた。もっている長盾で体がすっぽり覆っているように見えた。


「いいですね。そのまま密集して盾で壁を作ってください。そうです。盾で体を守りながら、槍で攻撃してください」


 三メートルある大型のリザードマンが盾を持って密集している光景は圧迫感があった。盾の隙間から突き出される槍は鋭く、上から下へ体重が乗っていた。

(これは、いけるかも)


 盾で壁を作り槍で遠くからドワーフを突く。殴るのもいい。槍を軽々と扱っている。

「ベネト殿、密集しているとしっぽが使えないがなんとかならないか」


 ルドルルブは言った。リザードマンには尾打というしっぽを使った技がある。


「それは我慢してください。ドワーフには近づかないことが大事です。盾を壁に、槍で突いてドワーフを近づかせないことが大事です。奴らは斧で木製の盾なら壊せます。この盾なら分厚いし頑丈でしょうから易々とは壊せないでしょうが、近づかない方がいいです」


 盾は古くなった船の木を再利用して作られたものだ。かたく頑丈である。


「わかった。隊列を組み、盾で身を守り、槍で近づかせない」


 リザードマン達は頷いた。


「第二部隊の皆さんは、我々についてきてください。第一部隊がドワーフの足止めをし、我々が横からつく、そういう作戦です」


 大型のリザードマンを第一部隊、中型を第二部隊、予備兵の小型のリザードマンは第三部隊とした。


「あなた方についていく」


 第二部隊の指揮官が言った。二メートル前後の中型のリザードマンは両手に槍を持っていた。


「お願いします」


 リザードマン達は静かに隊列を組み、盾の陰から槍を突く練習をした。








 ダレムは兵を三つに分けた。ダレムはドワーフの兵百を率い、西の重装歩兵隊に対応し、北の兵に対してはドワーフの兵二百、ドロワーフと、軽装歩兵隊のトンペコに率いさせた。残りの百は砦の守りに残した。


「いいか、トンペコ、相手のリザードマンの力を試すための戦だ。引き上げの合図が出たら、ドロワーフをなんとしても下がらせろ。わかったか」


 ダリムは戦の前にトンペコを呼び出した。


「あの、やるだけやってみますが、無りっぽいんじゃ。あのドロワーフさんですよ。私の言うことなんか、聞きませんよ。メロシカムさんに変わってもらえませんか」


 目が泳いでいる。


「だめだ。あいつには、この砦の守りをして貰う。おまえしかいない」


 ドロワーフを止めるのはメロシカムでも難しいだろうと思っていた。誰がやっても難しいのなら、トンペコにやらせてしまえと、ダリムは考えた。どうしてもだめな場合は、指揮をメロシカムに任せ、ダリムがドロワーフのところに行き、引っ張ってくるつもりだった。


「やれと言われればやりますよ。そりゃ、やりますよ」


 トンペコは投げやりに言った。


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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