第二話、一年前、秋
文字数 1,296文字
秘書のメリヤが言った。
カネス商会は主に穀物を商っているが、頼まれれば、武器でも何でも仕入れた。馬車一台から始め、二十年かけ港町フネイルに店を出した。とはいえ。
街道に盗賊が出れば、輸送のコストが上がり、穀物の値が上がる。
一ヶ月経った。
穀物の値段はやはり少しずつ上がり、金が下がっていた。メリアの調べによると複数の商会が、値段を気にせず穀物を買っていた。鉄鋼ミスリルなどは値が上がっていた。武具は、まだ値段は上がっていないが、在庫が減り始めていた。特に高級品であるドワーフ製の武具が手薄だった。
秘書のメリアが封書を手渡した。ワイシヒル商会は穀物を買っていた商会の一つである。面識は無い。
ルモントは封書を開け、中の便せんを読んだ。
ルモントはコートと帽子を取った。
メリアは心配そうな顔をした。
ルモントは寒そうに店の外に出た。
手紙に書いてあった場所に行くと、馬車がいた。人っ子一人いない野原である。
ルモントが馬車に乗り込むと、ドアが閉められ、外から鍵がかけられた。
光がほとんど入らない馬車の中で、メリアを連れてくればよかったと、ルモントは思った。ああ見えて、メリアはかなり強い。熊族の獣人で、ルモントの財布を狙った三人の強盗を、素手で、のしたことがある。
一時間ほど揺られ、馬車は止まった。
外に出ると、一軒の家があった。
中に入ると、背の低い小太りの男がいた。
ドワーフだった。