第四十八話、リザードマンの会議

文字数 1,551文字

 ロゴロゴスはリザードマンを集め、人間側から持ちかけられた話を説明した。反応は悪くなかった。リザードマンの中には、湖で人間の漁師ともめたものが何人かいたため、人と棲み分けができるのなら悪い話ではないと、考えるものが多かった。また、桟橋から北の漁場には水草が多く、魚の産卵場所も多いため、魚の保護という観点からも悪くはなかった。


「領主の息子はどのような権限を持っているのだ」


 領主というものは、この地域の人間の支配者であると言うことをリザードマンは理解していたが、年齢や能力を重視するリザードマンにとって、領主の息子という血縁関係を元にした支配制度を理解することは難しかった。


「領主の代理だ。人間は、高い地位を、その息子が受け継ぐ場合がある。領主の息子というのは、今の領主が亡くなった場合、次の領主になる可能性がある人物ということだ。つまり、領主の息子と約束をすると言うことは、次の代の領主も約束を守る可能性があると言うことだ」


「信用性があると言うことだな」


「あると言ってもいいだろう」


「サロベル湖の漁師はどう考えているのだ」


「サロベル湖の漁師はおそらく反対するだろう」


「では、だめなのではないのか」


「問題にはなるが、領主の権限は大きい。領主は軍事力と法を使い、その地域を支配している。サロベル湖の漁師が納得しなくても、領主の権限の方が大きい。おそらくサロベル湖の漁師は従うだろう」


「それでも従わなかった場合はどうするのだ」


「なるほど、それは問題だ。その点に関しては、領主側に取り締まるよう義務づけようと思う」


「領主の息子はサロベル湖の漁師の話を聞かず勝手に、この話を決めたと言うことか」


「そうなる」


「そんなことで大丈夫なのか。湖を半分取られたとサロベル湖の漁師に恨まれないだろうか」


「恨まれるだろう。だが、サロベル湖の漁師と話し合ったところでこのような合意はできない。その上の権限を持つ領主としか合意は難しい。今、人間はドワーフに攻められ困っている。この機会を逃せば、条件がよくなる可能性は低い」


「人間は約束を守るのか」


「わからない。だが、今人間は戦争中だ。戦争中にした約束を守らないようであれば、領主の信用は落ちる。領主の信用が落ちれば、次の戦争では、誰も領主の味方をしないようになる。だがら、約束を守る可能性が高いのではと考えている。また、サロベル湖という湖自体、領主にとっては、それほど価値の高いものではないと推測している。信用を落としてまで湖を手放さないとは考えにくい」


「だが、次の戦争では、我々を戦力として見てくるのではないか」


「そうなる可能性がある」


「その場合はどうするのだ」


「断るよう努力はするが、一度先例を作ってしまえば、状況によっては、受けざるを得なくなる」


「ドワーフと戦えば命を落とすものがでる。その価値はあるのか」


「ある。ギリム山が噴火すれば、食糧問題に発展する。魚が捕れなくなった時点で我々は終わる。我々にとっては魚は必要だが、人にとってはそれほどではない。それでも人は魚をとり続ける。漁業権があれば魚を確保することができる。無ければ魚を巡り人と争うことになる。湖を巡ってドワーフのように人と戦うことになるのだ」


 静まりかえった。人間と戦えば、リザードマンに勝ち目はなかった。武器も防具も兵の数も金も戦略も、何もかも負けていた。リザードマンが人間に勝っている点と言えば、泳ぎがうまいことと、体が大きいことぐらいである。

 

「人の法の下、生きていくしかないのだな」

 リザードマンはしっぽを揺らした。

 しばし話し合い、湖の漁業権と引き替えに、人間と協力しドワーフを討ち取ることに決まった。


 二日後、ロゴロゴスはアズノルとジダトレと会い、細部を詰めドワーフと戦う合意を文書にて交わした。


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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