第四十八話、リザードマンの会議
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ロゴロゴスはリザードマンを集め、人間側から持ちかけられた話を説明した。反応は悪くなかった。リザードマンの中には、湖で人間の漁師ともめたものが何人かいたため、人と棲み分けができるのなら悪い話ではないと、考えるものが多かった。また、桟橋から北の漁場には水草が多く、魚の産卵場所も多いため、魚の保護という観点からも悪くはなかった。
領主というものは、この地域の人間の支配者であると言うことをリザードマンは理解していたが、年齢や能力を重視するリザードマンにとって、領主の息子という血縁関係を元にした支配制度を理解することは難しかった。
「領主の代理だ。人間は、高い地位を、その息子が受け継ぐ場合がある。領主の息子というのは、今の領主が亡くなった場合、次の領主になる可能性がある人物ということだ。つまり、領主の息子と約束をすると言うことは、次の代の領主も約束を守る可能性があると言うことだ」
「恨まれるだろう。だが、サロベル湖の漁師と話し合ったところでこのような合意はできない。その上の権限を持つ領主としか合意は難しい。今、人間はドワーフに攻められ困っている。この機会を逃せば、条件がよくなる可能性は低い」
「わからない。だが、今人間は戦争中だ。戦争中にした約束を守らないようであれば、領主の信用は落ちる。領主の信用が落ちれば、次の戦争では、誰も領主の味方をしないようになる。だがら、約束を守る可能性が高いのではと考えている。また、サロベル湖という湖自体、領主にとっては、それほど価値の高いものではないと推測している。信用を落としてまで湖を手放さないとは考えにくい」
「ある。ギリム山が噴火すれば、食糧問題に発展する。魚が捕れなくなった時点で我々は終わる。我々にとっては魚は必要だが、人にとってはそれほどではない。それでも人は魚をとり続ける。漁業権があれば魚を確保することができる。無ければ魚を巡り人と争うことになる。湖を巡ってドワーフのように人と戦うことになるのだ」
静まりかえった。人間と戦えば、リザードマンに勝ち目はなかった。武器も防具も兵の数も金も戦略も、何もかも負けていた。リザードマンが人間に勝っている点と言えば、泳ぎがうまいことと、体が大きいことぐらいである。
リザードマンはしっぽを揺らした。
しばし話し合い、湖の漁業権と引き替えに、人間と協力しドワーフを討ち取ることに決まった。
二日後、ロゴロゴスはアズノルとジダトレと会い、細部を詰めドワーフと戦う合意を文書にて交わした。