第五十四話、リザードマン対ドワーフ
文字数 2,015文字
ザレクスは重装歩兵隊二百をドワーフの砦の西側に出した。ダリムも同じく西側に、兵百を率い砦の外に出た。
北では、リザードマン四百とベネド率いる歩兵百と、ドロワーフとトンペコが率いる二百のドワーフが相対していた。
西、ザレクス率いる重装歩兵隊は金属の板を張り付けた盾を前にじりじりと近づいた。少し離れた場所から騎馬隊を率いるプロフェンが突撃の機会をうかがっている。ダリムはそちらを警戒しながらも、盾を持ったドワーフ兵を前に進めた。重装歩兵隊とぶつかる。熱と打撃音、盾の押し合いになる。
ドロワーフ達はそれを見上げた。
槍を持った木の壁があった。
ドロワーフはハンマーを握りしめた。
ドロワーフはにやりと笑い駆けだした。つられて兵が前に動く。
指示を出した。
リザードマンは盾を構えながら槍をあげた。三メートルはあるリザードマンが自分と同じ身長の長さの槍を上にあげた。
ドワーフは、ドロワーフを先頭にばらばらに近づいてくる。
槍を打ち下ろした。
先頭を走るドロワーフに槍が集まる。
打ち込まれた槍を振り払う。ドロワーフは前に出ようとする。今度は突きが来る。ハンマーで受け止める。鋭い上に強い。押し込まれる。前に進めない。
ハンマーを小刻みに動かし槍を防ぐ。二の腕にいくつか傷ができる。
ドロワーフの元へ複数のドワーフが集まる。攻撃が分散される。ドロワーフはじりじりと近づく。
リザードマンは槍を短めに持ち、近づくドロワーフとその周りのドワーフに槍を突き出す。上から下、頭上から打ち込まれる槍、きわめて受けにくいそれを、ドロワーフは鉄の塊ともいえるハンマーで、あるいは兜で受け、たまにひょいと避けながらも、近づいた。耐えきれず倒れ込むドワーフもいた。それでも近づいた。這うように、傷を負いながら、打撃に刺突、きしむ骨、数人のドワーフが、リザードマンの足元、射程圏内に、近づいた。
ドロワーフはハンマーを二つの手で握りしめ、リザードマンが持つ長盾目がけ、振り下ろした。
あたった箇所から、上から下に真っ二つに粉砕した。
盾を持っていたリザードマンは左手をへし折られひっくり返った。
ドロワーフは前に進み、左右にハンマーを振り回した。リザードマンが少し距離をとる。その空いた隙間に他のドワーフが集まる。ドワーフは両手斧を手に斬り込む。リザードマンは盾に隠れる。攻撃の手が止まる。木片が飛ぶ。足や腹を切り裂かれ、リザードマンが倒れる。
状況を見てベネドが言った。
リザードマン達は盾を構えながら後ろに引いた。その歩みは遅い。リザードマンはしっぽがあり、前傾姿勢なため、体の構造上後ろに下がるのは苦手であった。ドワーフは追いく。長盾の隙間を狙い斧をねじ込んでいく。切り裂いた。
トンペコがハンマーを振り回しているドロワーフに声をかけた。
リザードマンの盾をたたき壊しはじき飛ばしている。聞いていない。
ベネトは東に控えていたリザードマンに命令した。リザードマン二百が、前進した。人間の歩兵百も前に出た。
あらかじめトンペコが指示を出していた五十のドワーフが対応する。
ドワーフはミスリルの兜を前に出し、斧を構えた。
中型、といっても二メートル前後あるリザードマンが両手に槍を持って前に出た。リザードマン達はドワーフを槍で殴りつける。ドワーフは兜で斧で受ける。血を流し膝を突くものが出る。前には出ず、その場にとどまる。
トンペコが指示を出し、盾を持ったドワーフが援軍に現れ前に出る。リザードマンは突きに変えて盾の隙間を突こうとする。ドワーフは槍を盾で受けながらじっと耐える。
ドワーフの砦から見て西側、ザレクス率いる重装歩兵隊とダリムが率いるドワーフ兵が盾の押し合いをしていた。
金属の板を張り付けた盾を壊すのは、ドロワーフでなければ難しかった。北の方では、動きがあったようで、喚声が上がっていた。
矢の音がした。ドワーフの砦から、飛んできた。矢が飛んだ方角を見ると、プロフェン率いる騎馬隊がいつの間にかダリム達の側面に近づいていた。矢をうたれ騎馬隊が距離をとる。
メロシカムが怒鳴った。
ダリムは目の前の敵に集中した。