第二十九話、国軍
文字数 1,776文字
王都トレビム、軍事顧問ペックスの部屋、古い書物が部屋の隅に積み上げられている。二人の男がいた。
モディオルが言った。モディオルは軍人である。
ペックスは申し訳なさそうに言った。
モディオルは困ったような顔をした。ギリム山のドワーフは二万いると聞いている。
ペックスは兵の数を増やすよう要請はしたが受け入れられなかった。
「後手に回っている。判断も遅いし、危機感も薄い、国と大領主との間の溝も深い。近隣諸国の動きもある。もし内乱が広がれば、それに乗じて攻めてくる可能性がある。そのため兵の数を温存しておいた方がいい。と考えているものが多い。最大数で、すみやかに潰してしまった方がいいのだが、保険を求めたがる政治家は、その辺りのことを理解してくれないのだ」
「その辺の事情は、わからなくはありませんが、ドワーフの強さはご存じでしょう。いくら何でもその兵力ではどうしようもありませんよ。噴火の情報が正しければ、奴らには後がない。数で劣っている上、ドワーフは強い」
力が強い、技が巧みというだけではなく、人とドワーフ、戦士としての覚悟の差のようなものを感じた。戦場となるとその覚悟の差はさらに開く。
ペックスは皮肉めいた笑みを浮かべた。長年、王の下、政治家と軍人の間に立って働いてきた。