第五十一話、リザードマン参戦

文字数 1,527文字

 鹿が何頭かとれた。血を抜き、内臓の処理をし、肉を塩水に漬けた。火事から逃げてきたのか、鹿は簡単にとれた。バター焼き、豆と煮込み料理、肉に香草をまぶしパイ生地に包み即席の石窯で焼いた。ドワーフたちは舌鼓をうった。


「鹿がとれるのはうれしいが、火は消えそうにないな」


 火が放たれ三日ほど経っているがギリム山周辺の火事は衰えるそぶりを見せない。ドルフとムコソルは食事をしながら話をしていた。


「当面の食糧は何とかなるでしょうが、いつまでもギリム山から出られないではアリゾム山進行の意味が無いですからな」


「道を確保しつつ、少しずつ食糧と人をアリゾム山に送り込む予定だったからな」


 二万のドワーフが一度にアリゾム山に移り住むという計画も考えたが、二万のドワーフが暮らせるような場所も食糧もなかった。アリゾム山を制圧し、話し合いに持ち込み、半年ぐらいかけ、移住する計画だった。


「どこかで火は収まり道ができるでしょう。それまでやれることをやっておきましょう」


「牧場跡の連中が五百ほど出て行ったな。アリゾム山に向かったのか」


「ええ、おそらくそうでしょう」


「追わなくていいのか」


「追ったところでドワーフの足では追いつけんでしょう。オラノフ殿に任せるしかありません」


「そうだな、あいつなら何とかするだろう。山の中の戦いよりも問題は平地の戦いだ」


「ええ、やはり、牧場跡は落としておいた方がいいかと」


「雑兵とはいえ、まだ三千五百ほど残っている。千三百のドワーフで落とせるのか」


 敵も対応してきている。


「かなりの犠牲が出ます」


「それでもやらなければだめか」


 火が落ち着くのを待つか、オラノフがアリゾム山を落とすのを待ってもいい。


「リザードマンが槍を返してきました」


「槍をか。人間に付くと決めたのか」


 リザードマンにミスリルの槍を送り味方にならないかと誘った。


「どうやらそのようです。湖の利権で取引をしたようです」


「人間め、いやな手を打ってくる」


「フエネ平原が落ちれば、こちらに敵が集中します。そうなれば終わりです」


「国軍をにらみながら、フエネ平原がつぶれる前に牧場跡を落とし、北に援軍を送る。そんなところか」


 簡単なことではないな。ため息をついた。








 リザードマンは部隊を三つに分けた。体の大きな者二百、中ぐらいの者二百、小柄な者百、計五百の軍を派遣することに決めた。小柄な者はまだ若いリザードマンで、戦の経験を積ませるために連れてきている。その中には、プレドの友であるピラノイも入っていた。

 装備はまばらで、鎧を着ている者の方が少なかった。体の大きなリザードマンは、木製の、戸板のような大きな盾を左に、右には長槍を持っていた。


「ルドルルブだ。指揮を任されている」


 リザードマン達はザレクスの陣に訪れた。


「ザレクスだ。ここの指揮を任されている。こいつは副隊長のベネド、彼は騎馬隊のプロフェン、こっちは私の親父だ。オラム砦の副司令官をやっている」


 ベネドとプロフェンは挨拶をした。


「ジダトレだ。ルドルルブ久しぶりだな、覚えているか」


 ジダトレはサロベル湖にて、リザードマンと合意を交わした後、ザレクスの陣でリザードマンを待っていた。領主の息子であるアズノルは報告をするため領主の館に帰った。


「覚えている。盗賊を共に捕まえた。また共に戦えることを楽しみにしている」


 ルドルルブは鼻腔を少し広げた。十五年ほど前、サロベルの警備隊長であったジダトレはリザードマンと共に貴族の屋敷を荒らす盗賊を捕まえたことがあった。


「ああ、残念ながら、私はオラム砦に帰らねばならんのだ。私の代わりに息子と共に戦ってくれ」


「わかった。ジダトレの息子ザレクスよ。共に戦い敵を蹴散らそう」


「喜んで」


 握手を交わした。
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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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