第三十六話、援軍

文字数 1,349文字

「本当に俺たちだけでやるんですか」


「ああ、そうだ」


 馬上である。モディオル率いる国軍はフエネ平原をつっきるように東に向かっていた。


「二万いるんですよね。ギリム山のドワーフって」


 モディオルの部下であるカルデは眉をしかめた。味方は千二百人しかいない。


「そう聞いている」


「俺たちだけで食い止めるんですか」


「ギリム山のドワーフが合流したら、もっとやっかいなことになるからな。その前に奴らを押さえておかなければならない」


「それ、本当に俺たちだけでやるんですか」


 カデルは念を押した。


「そう命じられている」


 モディオルは答えた。








「どうだ働いているか」

 フエネ平原、白髪の男がザレクスの営舎を訪ねてきた。


「父上」


「ジダトレ様、どうしてここに」


 ジダトレはザレクスの父であり、オラム砦の副司令官をしている。


「補給のついでだ」


「父上、マデリルの様子はどうでしょうか。体など壊していないでしょうか」


 ザレクスは言った。


「おい、なんでおまえは嫁の様子を一番に聞くんだ。だいたいしょっちゅう手紙のやり取りをしているんだろう。元気だよ。別に何ともない」


「そうですか」


 何ともないと言われると、それはそれで残念な気持ちにザレクスはなった。


「心配していた。たいそう、おまえのことを心配していた。これでいいか。それで、戦いの方はどうなっている」


「膠着状態というか。こちらから手が出せない状況です」


「やはり無理か」


「はい、非常にかたく、強いです。いたずらに攻撃を仕掛ければこちらの犠牲の数が増えるだけです」


「そうか」


「援軍の件はどうなりましたか」


「無理だな。オラム砦の兵をこれ以上さくことはできない。傭兵を雇う金もない。まともな兵はリボル殿が連れて行ってしまった。しかし、悪い話ばかりではないぞ。国軍が来たそうだ」


「国軍ですか」


「だが多くはない。千二百だ。何をしたいのかギリム山方面に向かっている」


「こちらには来ないのですか」


 ベネトは眉をしかめた。兵の質にもよるが、千二百の援軍が来てくれれば戦況を変えることができる。


「ああ、わしも奴らが何をしたいのかよくわからん」


「そうですか」


「その援軍の件だが、おまえらに少し相談したいことがあるんだ」


「なんです」


「援軍の心当たりが一つだけあるんだが、ちとややこしい」


「なんです。おっしゃってください」


「サロベル湖の北に、リザードマンがいるのを知っているな」


「まさか」


「そうだ。リザードマンに援軍を頼めないかどうか考えたのだが、どうだろうか」


「リザードマンですか。強いのですか」


「ああ、かなり力が強い。冬になると動きが鈍くなるが、まだそれほど寒くなってはいない。ドワーフと十分戦えるはずだ」


「強い兵であれば何でもかまいませんが、当てはあるのですか」


「ないな。だが、この辺りで使えそうな兵力と言えば、リザードマンぐらいしかいない」


「どのぐらいいるのです」


「四、五千人程度はいると聞いたことがある」


「しかし、来てくれるでしょうか」


「わからん。正直望み薄だと思うが、おまえらに異存が無ければ領主様にお願いしてみようと思う。わし個人で動ける話ではないからな」


「こちらとしては、異存はありませんよ。なにか動きがないと、プロフェン殿にせっつかれるのは、もう、うんざりですから」


 ザレクスは肩をすくめた。


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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