第二十五話、焦燥
文字数 1,177文字
フエネ平原
リボルは焦っていた。ギリム山から、二千ほどの兵が出発したと報告があった。こちらの戦力は千人程度。ドワーフの軍が合流すれば勝ち目はなくなる。多少の犠牲が出ても押しつぶす必要性があった。陣を構えるドワーフを蹴散らし、平原でドワーフの本体を騎馬隊で蹴散らす。リボルには、それ以外の勝ち筋は見えなかった。
少し編成を替え、ベネト率いる軽装歩兵隊と傭兵、民兵が集まった部隊を組ませることにした。
重装歩兵隊が前に出るとドワーフの兵が柵の外に出て対応した。押し合いになる。ドワーフも盾の扱いに慣れてきたのか、しっかりと押し返してくるようになった。
軽装歩兵隊を前に出し、柵に取り付こうとした。小盾を前に出し、槍と手斧を持たせている。小盾で矢を防ぎ、柵に取り付く。柵越しに槍の突き合いが始まる。
傭兵と民兵の寄せ集めの歩兵には、はしごを持たせ、木の柵を乗り越えさせようとした。ひるむ者もいたが、騎馬隊を背後につめさせ檄を飛ばした。逃げる者がいたら槍で軽く突いた。歩兵はおびえながらも、はしごを何本か柵にかけ、おそるおそるよじ登った。中に入った。斧を持ったドワーフが待ち構えており、何人も送り込むが、ことごとく斬り殺される。柵の中に降りた人間の兵を斧を持ったドワーフの兵が真っ二つにしている。あるいは、手斧を持った軽装備のドワーフ兵が飛びかかり頭をかち割っていく。その間、外の軽装歩兵が槍でつつきあいながら、柵の木を手斧で叩き壊そうとしていた。それに気づいたドワーフが柵越しに槍で突く。犠牲を出しながらも、一カ所二箇所と柵を壊していく。壊した柵から軽装歩兵隊がなだれ込む。
外に出ていたドワーフの兵が、止めようとするが、重装歩兵隊がそれを押さえ込む。プロフェン率いる騎馬隊が馬から下りて、柵の中へ入る。
ドワーフの兵は少し後ろに下がる。
柵の中には、もう一つ柵がある。中に入った人間の兵は矢を射かけられ石を投げつけられる。下がっていたドワーフの兵が左右から挟み込みような形で人間の兵に攻撃を仕掛けた。
人間の兵は左右に分かれ対応する。訓練を受けた軽装歩兵隊と騎馬隊は、それなりに持ちこたえるが、寄せ集めの傭兵民兵部隊は崩れる。逃げようとする者があらわれ、動きにくくなる。
片腕のドワーフ、メロシカムが幅広の直刀を手に人間の兵に向かって斬り込んだ。失った左手の代わりにつけた盾で、槍をはじき、右手の直刀で人間の兵を刺し殺し、手足をはね飛ばした。一角が崩れる。混乱が広がる。
リボルが撤退の指示を出した。敵陣地内で崩れれば立て直しようがない。兵が柵の外に流れ出す。何カ所か柵が壊れているため、撤退は難しくない。ドワーフは追い打ちをかけたが、足の遅いドワーフではそれほど効果が無く人間が柵の外に出た時点でやめた。