第四十六話、二手
文字数 1,777文字
ドワーフの陣営では軍議が行われていた。
ムコソルはいくつかの報告書を手に言った。
千二百人の国軍は火をつけた後もその場所でとどまっている。
ベリジは笑った。
オラノフは言った。
傭兵の騎馬隊がいるが、そこまでの数はいない。
伸ばした白髪に、特徴的な上向いた口ひげの男が言った。
全軍でアリゾム山に向かえば、リボルの軍がフエネ平原を北上し、東にいる国軍が西に、もともといたザレクスの軍と三方から攻撃されることになる。
グルミヌと呼ばれた男は、ギリム山の鉱物の流通を一手に引き受けている商人である。
ドルフは言った。
オラノフは顔をしかめた。
グルミヌは陰から表から、主戦派をたきつけていた男である。戦をせざるを得なかった原因の一つであった。信用できないと、思うのなら、戦場に連れてこなければいいのだが、グルミヌは鉱物の流通で財をもっている。装備品や食糧、その他諸々を出している。金を出しているのだから戦場に連れて行けと言われれば断りにくい。放っておくと裏で何を画策するかわからないという面もあり、連れてきた方がいいと判断した。ドルフにとっては、目の上のたんこぶのような存在であり、目の上のたんこぶは、目の上についているものでもある。
ドルフは言葉と裏腹に苦々しい顔をした。
長年集めた情報をあっさりと手放す。こういうことができるからやっかいなのだ。情報を握りつぶし味方の足を引っ張るような小物なら、こうはやっかいな存在にはならない。
オラノフは礼を言い、資料を受け取った。