第六十七話、北西、アリゾム山、援軍
文字数 1,624文字
牧場跡より北西の丘の上に、リボル達は陣を張った。ドワーフに囲まれるという重圧から解放されたおかげか、敗走したにもかかわらず、どの兵もほっとした表情をしていた。
リボルはバナックの肩を掴みながら言った。
頭を押さえてくる騎馬隊を囲んで殲滅するという作戦を提案したのはバナックであった。
などと言いながらも、まんざらでもない表情を見せた。
リボルは少し考えた。敗走中ということもあり、マヨネゲルの騎馬隊が身につけていたミスリルの武具をそれほど多く拾えたわけでは無い。防具に関しては捕虜にした騎兵の装備も含めて、三十領程度、武器に関してはもう少しあった。己の部下に使わせようと考えていた。
驚いた顔をした。貴重なものだ、いくら何でも全部は無理だろうと思っていた。
手柄を立て、ミスリルの武具を身につけた傭兵、負けて逃げてきたバリイ領の兵士達にとってはわかりやすいメッセージになる。
拠点は奪われたとはいえ、兵の数も少なくない。なにより、ドワーフはミスリルの騎馬隊を失った。野戦に持ち込めばドワーフを騎馬隊で分断することもできる。場合によっては北のフエネ平原に援軍を送ることもできる。まだ終わっていないのだ。
アリゾム山。
デノタスが言った。山中である。アリゾム山山岳部隊が集まり、デノタスの話を聞いていた。新兵は別だが、ベテランの山岳兵は山の斜面に溶け込むようにたたずんでいた。
人より強い獣などいくらでもいる。
俺らの山ですしね。デノタスは付け加えた。
ファバリンは思案下につぶやいた。
ハイゼイツは頭をかきむしった。道の真ん中に木が積み上げられていた。近づくと油の臭いがする。撤去しようと近づけば、どこからか火矢が放たれ燃やされる。そうなると土をかけ火を消さなければ近づけない。幾度となく繰り返されたことだ。フエネ平原に、援軍と物資を届けようとしていたハイゼイツの部隊は足止めをくらっていた。
ハイゼイツは怒鳴った。
岩の後ろから火矢が飛んできて、道に積まれた木に刺さり火がついた。