第八十五話、懸念
文字数 1,276文字
アリゾム山山岳部隊のファバリンは胸の傷を押さえ顔をしかめた。
エンペドはあきれた表情を見せた。
ファバリンは驚いた表情を見せた。
ファバリンは顔をしかめた。
デノタスが言った。
「司令官と言え。柵や建物を焼いたとはいえ、道は一本しかなく、背後は崖だ。力づくで取り返そうとすればかなりの犠牲が出る。すぐには落ちないだろう。その間に、砦の外にいるドワーフに背後を襲われることになる。そもそもあそこは千人の兵が立てこもれるような場所じゃない」
ダナトリルがアリゾム山山頂を攻めていると聞き、ペックスも驚いていた。
ダナトリルは臆病な男で、このような行動を起こすとは思ってもいなかった。アリゾム山に関しては膠着状態に持ち込み、その間に牧場跡のドワーフを片付ける。ペックスはそう考えていた。
確か名ばかりの名家で、懐事情はそれなりに厳しかったはずだ。
三日ほど夜間以外は休み無く攻めているが、牧場跡は落ちてはいなかった。最初の頃は鎌槍の働きに翻弄されていたドワーフだったが、徐々に慣れていき、あまり効果は無くなっていた。人間の兵の犠牲はずいぶん増えていた。
牧場跡のドワーフを北と東と西から攻めていた。
ドワーフの王を倒した後の和平交渉の心配をしていた。
何度もこの話をしているが、すっきりしなかった。