第六十一話、牧場跡の攻防2

文字数 1,235文字

 スタミンが前に出た。槍を振りかぶり、思いきりぶつけた。ベリジは戦鎚で受け止めた。槍はしなった。


「ほう、いいじゃないか」


 ベリジは言った。


「ちょいやー!」


 スタミンは全体重を掛けて突きを放った。ベリジは易々と払った。スタミンの身長は二メートル近くある。一方のベリジは百四十センチ程度、大人と子供程度の身長差がある。スタミンは連続で突きを放つ、火花が散り槍の刃先が削れていく。どれも必殺の突きである。ベリジは戦鎚で払い、鎧で受け流した。


(まるで根が生えているようだ)


 動かない。どの攻撃も全力である。相手を根こそぎ吹き飛ばす。そのような攻撃でなければ、ドワーフは倒せない。中途半端な攻撃は、鎧に跳ね返されドワーフが近づく機会を与えるだけだ。にしても固い動かない。他のドワーフなら吹き飛んでいるような攻撃をベリジは軽くいなしていた。汗が吹き出し息が上がる。 

 人間の兵が左右から槍で攻撃した。脇の下、膝の裏、鎧の隙間を狙っていた。ベリジはわきを締め、足を動かし攻撃をはじいた。

 ベリジは二百年生きている。着ている鎧は百年前に作ったミスリルの鎧である。どこに隙間があるのか、どこで敵の攻撃を受ければいいのかよくわかっていた。

 ベリジは少しずつ前に進む。その後から、他のドワーフがベリジが開けた土壁の穴から入ってきていた。


「盾兵、こいつを落とせ!」

 盾兵が前に出て、盾ごと体当たりするようにベリジを押した。

 ベリジは左手で盾を止めた。逆に押し込んだ。盾兵がずるずると後ろに下がる。


「くらえ!」


 スタミンは槍を高々と上げ振り抜いた。ベリジの兜に当たった。槍がしなりにしなる。ベリジは少し首をかしげ。 


「背が縮んだわ!」 


 戦鎚を振った。スタミンの槍がへし折られた。

 スタミンは腰に手をやった。手に取ったのは棍棒である。腕ほどの太さの丸太に鉄板を巻いている。ドワーフの攻撃に対してどのように頑丈な剣でも受けることは難しい。だから棍棒である。これならば易々と折れることはない。両手で握りしめる。

 ベリジが近づいてくる。戦鎚を振る。スタミンは棍棒で合わせる。はじかれるようにのけぞる。二度三度と打ち合う。火花が飛び木片が飛ぶ。


「くっ」
 押されている。

「スタミン下がれ!」


 リボルが叫んだ。

 ベリジはスタミンの膝の辺りを狙い戦鎚を振った。スタミンは叩きつけるように棍棒を振り下ろす。ぶつかる。棍棒は根元からへし折れた。スタミンの両手には木片が残った。


「とどめだ」


 ベリジは戦鎚を後ろに引いた。


「くそ」


 何かが飛んできた。


「ぐおっ」


 ベリジは顔を背け目を覆った。灰である。


「逃げてください」


 バナックがベリジの顔目がけ灰を投げた。


「助かった」


 スタミンは距離をとり、兵を下がらせた。

 その後押し合いが続き、昼頃にドワーフの兵は撤退した。

 血の臭い、肉の焼ける臭い、崩れた土の壁、人もドワーフも多数の死者が出た。

 リボルは、疲れ切った兵をたたえながら、壁の補修を命じた。

 兵の動きは鈍かった。


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登場人物紹介

ドルフ

ドワーフの王

ムコソル

ドルフの側近

ロワノフ

ドワーフの王ドルフの長男

ダレム

ドワーフの王ドルフの次男

ドロワーフ

ハンマー使い

メロシカム

隻腕の戦士

トンペコ

ドワーフの軽装歩兵部隊の指揮官

ミノフ

グラム


ジクロ

ドワーフの魔法使い

呪術師

ベリジ

グルミヌ

ドワーフの商人

オラノフ

ゴキシン

ドワーフの間者

部下

ノードマン

ドワーフ部下

ヘレクス

カプタル

ドワーフ兵士

ガロム

ギリム山のドワーフ

ハイゼイツ

ドワーフ

ドワーフ


マヨネゲル

傭兵

マヨネゲルの部下

ルモント

商人

メリア

秘書

バリイの領主

イグリット

アズノル

領主の息子

イグリットの側近

リボル

バリイ領、総司令官

レマルク

副司令官

ネルボ

第二騎馬隊隊長

プロフェン

第三騎馬隊隊長

フロス

エルリム防衛の指揮官

スタミン

バナック

岩場の斧、団長

バナックの弟分

スプデイル

歩兵指揮官

ザレクス

重装歩兵隊大隊長

ジダトレ

ザレクスの父

マデリル

ザレクスの妻

 ベネド

 副隊長

ファバリン

アリゾム山山岳部隊司令官

エンペド

アリゾム山山岳部隊副司令官

デノタス

アリゾム山山岳部隊隊長

マッチョム

アリゾム山山岳部隊古参の隊員

ズッケル

アリゾム山山岳部隊新人

ブータルト

アリゾム山山岳部隊新人

プレド

サロベル湖の漁師

ピラノイ

サロベル湖のリザードマン

ロゴロゴス

リザードマンの長老

リザードマンの長老

リザードマン

ルドルルブ

リザードマンの指揮官

ゴプリ

老兵

シャベルト

学者

ヘセント

騎士、シャベルトの護衛

パン吉

シャベルトのペット


ソロン

シャベルトの師、エルフ

ルミセフ

トレビプトの王

ケフナ

内務大臣

 ケフナには息子が一人いたが三十の手前で病死した。孫もおらず、跡を継ぐような者はいない。養子の話が何度もあったが、家名を残すため、見知らぬ他人を自分の子として認めることにどうしても抵抗があった。欲が無いと思われ、王に気に入られ、内務大臣にまで出世した。

外務大臣

ヨパスタ

オランザ

財務大臣

ペックス

軍事顧問

トパリル

情報部

モディオル

軍人

カルデ

軍人

スルガムヌ

軍人


人間

兵士

ダナトリル

国軍、アリゾム山に侵攻。

モーバブ

ダナトルリの家臣。

国軍伝令


兵士

兵士

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