第八十三話、アリゾム山山頂
文字数 1,262文字
少し焦げた匂いがする。
アリゾム山、山頂付近にダナトリル率いる国軍千はたどりついた。
山頂の砦は、背後に崖があり、正面は斜面になっている。その斜面に山の地形を生かした空堀がいくつもあり、斜面の右側には蛇行した細い道があった。
兵を少し休ませてから、兵を進ませた。
右手の蛇行した道に歩兵を百人ほど送り込み、左手の段々畑のようになっている空堀には三百ほど送り込んだ。
本来なら空堀をのぼったところに木の柵があったが、それらは、すべてアリゾム山山岳部隊が念入りに焼き壊している。ドワーフが少し再建しているが、一部分だけである。
人間の兵が空堀を乗り越え、斜面を登っている。
兵の質は悪い。装備も足並みもそろっておらず、士気も低かった。それでも数を頼りに、兵は空堀を乗り越え、斜面を登る。頂上付近になると斜面の幅は狭くなっていく。
三十ほどのドワーフが斜面の上で待ち構えている。
斜面を登り切った人間を、ドワーフは十分に引きつけ、横一列に迎えうつ。
ぶつかる。
人間の兵の槍を、兜で受け、そのまま前へ、懐深く潜り込み、斧を振る。鎖帷子がちぎれ、柔らかい腹の中に入り込む。そのまま振るって鎖帷子ごと腹をかっさばく。人間の兵は臓物をこぼしながら横に倒れ込む。絡みついた鎖帷子と臓物を引きちぎり、次の獲物を迎え撃つ。人の悲鳴が響く。
人間の兵の足が止まる。
ドワーフは、横一列のまま、ゆっくりと前へ進む。
恐怖に、斜面を登った兵が後ろにさがる。
ドワーフは前へ。
逃げようと、人間の兵が背を向ける。斜面を登ってきている兵とぶつかる。
ドワーフは前へ。
人間の兵の背中に斧をたたき込む。血しぶきと肉片が斜面を落ちていく。
崩れる。
人間の兵は、武器を捨て、逃げようと飛び上がり斜面を転がり落ちる。兵が重なりあう、もつれあう。それに斧をたたき込む。命乞いをする人間の兵を兜ごとたたき切る。斜面の棚に人間の死体が転がる。
ドワーフは止まる。
逃げる人間の兵を追い、斜面を駆け下りようとするドワーフがいたが、ドワーフの指揮官が止めた。一度下りてしまうとドワーフの足では戻るのに時間がかかる。
人間の兵は後ろに下がり、弓矢隊を前に出した。
ドワーフも下がり、矢盾の後ろに隠れた。
矢が放たれる。
ドワーフもクロスボウを手に応戦する。斜面の上からは見通しもよく、人間の兵は次々と倒れた。
右側の斜面に掘られた細い道にも、人間の兵百が進軍していた。
狭い道で一度に五人ほどしか通れない。上から丸見えなため、人間の兵は、盾を頭に抱え移動した。石や矢が飛んでくる。
その道の先に、一人のドワーフが鉄棒片手に立っていた。
肩まで伸ばした灰色の髪、憂鬱そうな顔をしている。カプタルである。