第二十六話、進行
文字数 1,620文字
ドワーフの王、ドルフは馬上にいた。馬と言っても人間が乗るような大きな馬ではなく、ドワーフ用に改良された背の低い短馬といわれる品種である。
ドルフは二千の兵を率いていた。兵の士気はいいとはいえなかった。戦に興奮している者もいれば、顔を下に暗い雰囲気を持っている者もいた。
ドルフの側近ムコソルが言った。
ドルフはため息をつき背筋を伸ばした。
同じく短馬に乗った白髪を頭の後ろでまとめた筋骨たくましいドワーフが言った。
ベリジはうれしそうに笑った。
ドルフは再びため息をついた。
領主のイグリットからの親書を携え、ソロン一行は、ドルフに会うため、ギリム山に向かい馬を走らせていた。
途中、領主からの使者が追いついてきて、ドルフ王が、ギリム山を出発したと連絡があった。
ドルフ王率いる二千のドワーフは、西のフエネ平原に向かわず、南西に向かっていた。
ヘセントは首をかしげた。フエネ平原ではドワーフの兵とリボル率いる騎馬隊が戦っていると聞いていた。援軍ならば、まっすぐ、西に行き、味方に合流するはずだ。
シャベルトは言った。
「確かに、あの辺りは、絶滅危惧種に指定されている樹上手長カメの生息地ではあるが、私たちではあるまい。寄り道などしないだろう。ドルフは素直な男だが、その配下のムコソルは知恵の回る男だ。何か策があるのかもしれんな」
ソロンは馬を急がせた。
ギリム山を出発したドワーフの軍が南西に向かっているという報告を、リボルも受けていた。
レマルクは地図を見ながらいった。
ギリム山噴火の件を、領主であるイグリットは伝えなかった。不確かな情報であるということと、兵がドワーフに同情し、士気がさがるのを防ぐためである。
リボルは心底いやそうな顔をした。