第二十七話、矛先
文字数 2,246文字
バリイの領主イグリットは南西に移動した二千のドワーフに少しほっとしていた。
ゼルヤテはバリイの南にあり、海洋貿易が盛んな土地である。
少し考え込んだ。
近隣の領主にも援軍を請う手紙をイグリットは出しているが、他の領地に軍を出すのは好ましくない、内政干渉になるなどと、やんわりと断られている。国王も、他の領主に兵を出すよう要請を出しているが、よい返事をもらえていないようだった。
イグリットは鼻で笑った。
イグリットは地図を見つめた。
リボルは、フエナ平原にザレクスとベネドが率いる重装歩兵隊二百と歩兵二百、プロフェン率いる騎馬隊五十を置いて、残りの五百の騎馬隊と四百の歩兵を連れ南西にいる二千のドワーフに向かって出発した。ザレクスには無理に攻めるなと命じた。
リボル率いる騎馬隊は途中兵を増やしながら、二千のドワーフの元へ向かった。エルフがドワーフの王に親書を渡すという話があるため、その結果が出るまでは二千のドワーフと戦うわけにはいかず、動きは遅かった。
リボルとレマルクは馬で併走していた。
だが、その分相手にも時間を与えていることになる。
戦場にいても様々な情報は入ってくる。
リボルは各地に使者を出し、兵を集めていた。
レマルクは顔をしかめた。兵の数だけならすでに四千を超えている。まともな兵も集まっているものの、税の代わりに槍を渡された民兵や、年を取った退役軍人もいた。フエナ平原で使用した金属の板を張り付けた大盾を、急遽作らせているが、まだ時間がかかる。その他の武具も十分にそろってはいない。兵糧はまだ余裕があるものの長期化すればどうなるかわからない。
数は重要だ。人数が多ければ敵はひるむ、取り囲んでしまえば、まず負けない。だが、相手はドワーフだ。人数が多いからとひるむだろうか。囲まれたからと負けを認め武器を捨てるだろうか。そうは思えない。敵の人数が多ければ、たくさん斬り殺そうとする。囲まれたなら斧を振り回して切り抜ける。攻めるときは兜を前にじりじりと進む。足が遅い分、ドワーフには後に逃げるという発想がないのだ。おそらく、そういう連中だ。圧倒的な数の差があれば別だが、中途半端な雑兵が集まれば死者が増えるだけだ。ドワーフ相手の戦だ。どのような犠牲を払ってでも勝てばいいという戦ではない。領民が減ればそれだけ領地が荒れることになる。ドワーフに勝ったところで得るものは、おそらく少ないだろう。
だからといって、数を増やす以外に何かいい方法があるのかといわれれば、レマルクは何も思い浮かばなかった。
プレドはリボルの軍に加わっていた。
こんなにすぐに戦争に連れて行かれるとはプレドは思っていなかった。周りを見渡すと、新兵や老兵が多かった。
いつものように町の入り口で立っていると、上役に呼ばれ、そのままドワーフと戦う軍に編入された。町の警備とかだったんじゃあ、といってみたが、配置転換だといわれ、家族と話す時間も無いまま、列に加わっている。
プレドは後悔した。