第十七話、丘の上
文字数 1,703文字
樹木の葉色は少し変わり、生い茂る雑草は所々茶色く変色していた。風が少し寒かった。
フエネ平原の南西、小高い丘にドワーフの兵は要所要所にエルリムからもってきた石を積み上げ、防壁にしていた。足りない部分は木の柵を作り守りを固めた。五百人ほどのドワーフ兵が忙しそうに動き回っている。
リボルは馬上にいた。十キロほど離れた丘の上にドワーフの兵がいる。
副司令官のレマルクが言った。角などの要所要所のみ石を使っている。
「そうだ。ここに拠点を作るのなら、なぜエルリムを燃やした。ギリム山、エルリム、フエナ平原と拠点をつないで、領地を切り取っていけばいいではないか。せっかく取ったエルリムを捨て、こんな何もないところに一カ所だけ拠点をつくってどうする。奴ら何をしたいのだ」
第三騎馬隊隊長のプロフェンが言った。
ただ、水はけが悪く土地もやせているため、作物を育てるには適していない。
他家を燃やして自家を建てる。とは、この国のことわざである。
昔、運気がいいと言われている土地に農民が家を建てた。それを知った商人がその土地を売ってくれと頼んだが、農民は首を縦に振らなかった。商人は手下に命じて、家に火をつけ燃やした。住むところがなくなった農民は、安値で土地を商人に売らざるを得なかった。商人はその土地に大きな屋敷を建てたが、その後、放火したのが商人だとわかり、捕まり縛り首になった。土地と屋敷は農民の物になった。身勝手なことをしてはいけないということわざである。
柵の高さはドワーフにあわせ低めに作られているものの、太めの頑丈な木で作られ、馬止めように先端のとがった木が飛び出している。
ため息をついた。
ドロワーフはハンマーで杭を打ち込んでいた。一撃で杭は三分の二ほど地面に埋まった。
ダレムが言った。
木の柵の補強をしていた。角をエルリムから持ってきた石と土で壁を作った。二つある入り口の正面にも石壁を使っている。半年ほど前に、この丘の上にあった漁師の小屋を買い、木材と食糧をため込んでおいた。それを使い柵を作っていた。
ドロワーフはハンマーを肩に担いだ。円柱の鉄の塊を力任せに振り回す、そういう武器であった。
ドロワーフは人間の兵がいる方角を見た。別の丘の上で陣を敷いている。
ドロワーフはすねたような表情をした。