#4 【準備】ウメダダンジョン攻略!part.1
文字数 2,893文字
【ヴェイルノート】
『お待ちしておりましたよ。私の名前はヴェイルノート。”グラリオ将軍”、憧れの貴方に会えて光栄です。』
『いやぁ、よくお似合いですよ…皇帝もきっとお喜びになられる…
あぁ、もしや袴(はかま)の方がよろしかったかな?』
『皇帝…?さっきから何を言っているんだ!お前は何なんだ!この城は何なんだ!質問に答えろ!』
『おやおや、貴方ともあろう者が自分に置かれた状況がわかっていないようだ。
…仕方ない、説明しましょう。それではまず1つ目。先程も言いましたがここは貴方の居た世界ではない。言うならば”異世界”です。武器、魔法、ギルド、魔物などが存在するファンタジーの世界。貴方も映像で見たことはあるでしょう。コンピューターゲームはお好きかな?』
『ええ、ええ、そうです。
では2つ目。良い国民と高い軍事力を誇る。それがこの国、”世界の中心”ゲノン帝国です。何を隠そう、今私達のいるこの城こそが”全ての始まりの地”ゲノンムルグ城。』
『そしてそして、貴方は、貴方様は、グラリオ将軍。皇帝を、この国を、この城を守るための戦士。ヒヒ…』
『ヒヒヒ…貴方は今、”消す”力を得た。
…ここに地球儀があります。不思議でしょう?手を触れてもいないのに、回っている。いやぁ、地球というのは丸い…』
『(なんだ…?指が勝手に動く…!こいつの言う事に逆らえない…!)』
『では、この国を指で触ってみて下さい。3…2…1……』
『はい!!はい消えました!はい消えちゃいました!!ほら見てください!貴方の触った所は青い海になっている。すごいでしょう?』
『ヒヒヒヒ…そうです。地球儀から国が無くなったんです。さて、では次は――』
『日本を消しちゃいましょう…あぁ、なんて小さく可愛らしい国なんでしょうか…さぁ、日本の抱える問題も、赤子に悩む母親も、いじめを恨む学生も、全て、優しく撫でてあげましょう…
さぁ!!!』
『どうしてですか?ただの地球儀ですよ?ちょっとリアルでちょっと不思議な地球儀。さぁ消しましょう。さぁ殺しましょう!!!』
『ヒャハハハハ!!その青ざめた表情(かお)、いいですねぇ~…』
『(くそっ…!誰か…誰かオレを止めてくれ…!!誰か…っ!!)』
『ご自分の置かれた状況がわかりましたか…?”グラリオ将軍”…?』
『はぁ…!はぁ…!うっ…!私は…何をすればいい…!』
『皇帝からの命令はこうです。”異世界人を確保しろ”…
簡単な事です。この世界には貴方の他にも日本から来た人間が何人もいる。その人間達を捕らえ、この城に連れてくればいい…』
『処刑するんですよ。処刑場は綺麗な花畑のある中庭を予定しています。処刑の方法は……』
『…ま、待て!!私には何の罪もない人を殺せない!!』
『貴方今…殺しましたよね?その指で…何の罪もない人を……』
『……命令は絶対です。いやぁ、貴方は忠実で優秀な幹部…なんて素晴らしい…!!これからよろしくお願いしますね…?ヒャハハハハハハ!!』
あ、あぁ…2人ともすまない…!
悪夢というやつだ、たまにフラッシュバックしてな…
寝ていても起きていても思い出すんだ…まったく困ったものだよ…!
元に戻ってよかった~…いきなり頭を抱え込むからどうしようかと思ったんだ……薬でもあればいいんだけど…
…すー…はー…
うむ、もう大丈夫だ!さて2人とも、びっくりする事があるんじゃないかな?
ジャック、ミノル、グラリオの前には、たくさんの草木に覆われた大きな建物があった。
窓ガラスが割れて水が流れてるし、滝になってるし、なんかモンスター出そうだし、これって廃墟!?
この町の名前はウメダ。君達は”ウメダ”という言葉に聞き覚えがあるだろう?ウメダ、といえば?
大阪の梅田?地下はまるでダンジョンみたいに広いっていうけど…?
もしかしてここ、梅田駅!?ほらあそこ!文字がかすれてるけど梅田って読めるよ!?
おお!よく読めたな!!
正解だ!ただ、この梅田駅は少なくとも数百年、いや数千年経っている…”あっち”で何があったのかはわからないが、これは私達の知るもので間違いない…
どうなってんの!?じゃあ現実にはこの駅はない!?いや現実が遥か未来!?んんん??
ボクがここへ来る前はずっと未来の日本じゃないし、学校があって車があってビルがあって…いつもと変わらなかったよ!?
ふぅ…それを聞けてよかった…
なぜこちらの世界にこれがあるのか、なぜこのような姿をしているのか、現実ではどうなっているのか、帝国では研究や調査をしているが、未だに謎が多くてな……
そう、わかっているのは内部に強い魔物と強い武器が眠っているということでな…この世界の住人からはダンジョンと呼ばれていて、多くのギルドやパーティーが挑んでいるのだが……
そうだな…特にジャックくんは美味そうな体をしているから、獰猛な獣の魔物に食い殺され――
はっはっは!安心してくれ!私がいる!
だがその前に、冒険者ギルドへ行こう!チート、と言ったのはもう1つ理由があってな、魔物を倒すと大量の”ジョブ経験値”のようなものを獲得できるんだ。ジョブ経験値というのは…有名ゲーム実況主ならわかるだろう?
わわわかるけど…!
あ、でも冒険者ギルドってあの男だらけの所じゃ…
はっはっは!あそこはただのギルドだ!
『ボーイズ・ラブ~愛の戦士~』という、奇妙なギルドでな、ウィッグを置いていた者がいただろう?彼?彼女?まぁ細かい事はわからないが、アレがギルドマスターなんだ!
冒険者ギルドは……ウム、あそこだな!
冒険者ギルドでは、魔物討伐のクエストを受けたり、パーティーを募集したり、ギルドの入団手続きをしたり、ジョブになったり、いろいろな機能が備わっているんだ。
ジョブかぁ…ファンタジーっていうかゲームっていうか、ワクワクするね!
腹いせにいきなり勇者になってやる!何が愛の戦士だあああ!
チートよオレに力を!うおおおおおおおおおお!
こらこら2人とも、走ると危ないぞ。
まったく、まるで自分に子供ができたようだ…
…くそ…!
おーい!待ってくれ!私のオススメのジョブがあるんだ!
……こちらウメダ。グラリオ将軍、異世界人2名を発見しました。
ええ、滞りなく計画を実行します。ヒッヒッヒ……!
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