#10 【悪夢】女の子の顔がトラウマになるわけがない
文字数 4,318文字
(オレがグラスオーヴィにやってきてから数日が経った。アルバイトもしたことのないオレにとって初めての酒場の仕事は、簡単なものではなかった。)
(それでも意外に楽しいもので、厨房で料理の盛り付けの手伝いをしたり、メニューを覚えたり、掃除をしたり。ジャックとしてでなく、ジャミ子として裏声の練習や女の子の仕草をやってみたりしてる。)
(その甲斐あってか、"ガールズランキング"では2位を獲得。このガールズランキングは、ナナちゃんの提案で作ったもの。女性らしさやかわいさ、客のニーズに応えられているかなどで採点される。)
(しかし、オレは甘かった。本当に甘かった。まだ自分に置かれた状況を理解できていなかったんだ…。あの日を迎えるまでは……。)
グラスオーヴィ、更衣室。
誰もいない部屋で、ジャックは着替えていた。
♪ふふふと笑えばあらふしぎ〜 ♪異世界シンデレラのご登場〜
♪人気は誰にも渡さない〜 ♪そうよ私はジャミ子ちゃ〜ん
♪ラララ~
きゃっ!?ちょっとノックぐらいしなさいよ!乙女の着替え中でしょ!?
ジャミ子さん、お砂糖ってどこに置きましたっけ?ここかなぁ…
コホン。ノノちゃん?無防備すぎないかしら?かわいいお尻が見えちゃってるわよ♥
ジャミ子さん、男性のお客様に胸が大きいと言われました…どうしたらいいですか?
大丈夫?女の武器に下心を抱くなんてひどい男ね、まったく!
そう、体は男、心は女。
ジャックは、女というよりオネエに近い状態になっていた。
なぜならば、グラスオーヴィの乙女達はジャックを女性のジャミ子として認識。
無防備なポーズはもちろん警戒心はなく、着替えも堂々と行い、体の悩みを打ち明けたりしていた。
最初は目のやり場に困っていたジャックだが、
ジャックは女性であるジャミ子として振る舞うことで、なんとか自然に接するようにしていたのだ。
それなら今度一緒にウエノに行くにゃ!あそこは何でも揃うからいろいろ見て周るにゃ!
ウエノということは、魔法使いのギルドがあるんですよね?行きたいです!
ツインウィッチの事にゃ?たしかギルドマスターはミーナとルナって子だったにゃ
私、精霊術士なので…魔法使いは魔法ジョブの原点ですから…会ってみたいんです
まぁ。いいですねぇ♪私、銭湯というのも入ってみたいですわ。
いいですね!ここのお風呂は小さいし、みんなで入りましょ!
(銭湯…!?ヤバい…!ただでさえみんな一緒に住んでるのにそんなことになったら鼻血ブーじゃ済まない…!でも見たい…!)
そう、極め付けは共同生活である。
ジャックを含み女子全員がこのグラスオーヴィの中で生活をしている。
部屋は1人につき1つ。簡単なお風呂、トイレ、キッチン付き。
そう、ジャックは薄々気付いていた。
これは、1つ屋根の下美少女と暮らすシチュエーション。
紛れもなく、ハーレムなのだと。
(ふぅ…さすがに外でジャミ子の格好は恥ずかしいし、いくらなんでもみんなと女湯なんてムリだし、これでいいんだこれで。うん。見たいけど。うん。)
大丈夫です!リーシャちゃんもこのままがいいって言ってたし♪
(なんでミノルが一緒に女湯…!?そうか、コイツ異世界に来てから女になったんだっけ…ぐぬぬ…!)
んなっ!?なんですとーーー!?いつ!?いつよそれ!?
ミノルさんは影騎士なんですねぇ?ではこの盾を装備できるわけですか…
ジョブはね、自分に合ったものを"装備"できるんだって!
じゃあ、ボクが影騎士じゃなくて魔法使いだったら重くて持てないのかな…?ジョブってすごいね!
ジャック。君は剣士だろう。剣士は身軽でいいぞ。私のようにいつもの服でも剣を装備できる。
ジャックは男だから、鎧や兜、盾を装備してみたらどうだ?
お、
男…言葉が重く感じる…。
あそうか、ソニアちゃんも剣士なんだね?
お…お揃い……そ、そっか…なんかなんか照れちゃうなぁお揃いなんて!あはは!あはははは!
今度から剣の稽古をつけてやろう。みっちり鍛えてやるぞ?ふふふふ…
感謝しろジャック!伝説の剣豪、グラス・オーヴィの娘である私が直々に剣を叩き込んでやるぞ!はははは!ははははははは!
この辺りは市場だからな。新鮮な魚、肉、野菜、飲み物も売っているんだ。
中にはインチキや怪しい店もあるんだが…
ふふ。おもしろいな。これが異世界文化というものだろう。
ジャックとミノルと小鳥にとってはバナナ、私達にとってはバノノなんだ。
驚くものか。私達の知るこの世界にもまだ知らない場所がある。知らない魔法がある。知らない剣がある。ということは、私達の知らない世界があっても不思議じゃない。そうだろう?
もちろん、稽古は稽古だ。私にとって稽古は稽古。ジャックにとっても稽古は稽古。
わかってるよな?
【七海】
ごめんなさい。ミーナ様とルナ様は居ないんです。
私はツインウィッチのサブマスターの七海といいます。
あ…風の言霊はお母さんのギルドです。今はもうやめちゃったけど…
アメリアさんってもしかして、W.C.のNo.2の人!?ノノちゃんのお母さん、すごい人だったんだね…!
ワールドコネクションといって、私やソニアさんのいる世界とジャックさんやミノルさんのいる世界の繋がりを研究している組織です。いろいろなギルドや国が協力しているんですよ。
(そこに行けばどうしてオレが異世界転生したのかわかるのか……)
ええとね、今はギルドアカデミーに行っているの。しばらくは帰ってこないと思う。
……なんて読むんだ……?のぞきまつせ?なぁミノル、変な名前の銭湯だなぁ…ってか異世界に銭湯なんてあるんだ…
にゃ〜?ジャッきゅん、いくらミノルっちとシッポリホッコリしたいからってそんな誘い方じゃダメだにゃ〜?
ほう?私と稽古よりミノルとけしからん事がしたいのか
あぁん?
あら、元気ですねぇ…走って銭湯へ入っていきましたよ?
――男湯。
※アイコンはそのままてす。ご了承下さい。私も違うアイコンが見たかった(意味深)。by作者
あ、ちょうどいい熱さだ。
はぁーあ…結局みんなとは別か…まぁいいんだけどさー…
それにしても変な名前の銭湯だよなぁ。よく見る普通のロッカー、いろんな種類の普通のお風呂、男女を隔てる普通の高い壁…どっからどう見ても普通の銭湯だよなぁ。のぞきまつせ…のぞきまっせ…のぞき……ん?
待てよ…のぞきまつせ…のぞきまっせ……覗きまっせ!
よし、新入り。ここのシステムを教えてやる。まず男湯と女湯を分ける邪魔な壁があるだろ?これは魔法をかけると男湯からは透けて見れるが女湯からはただの壁、そういう風にできるのさ。
(マジックミラーみたいな…?
どうする…!?今止めないとみんなが覗かれてしまう…!みんなの…みんなの……!!)
(いかんいかん!これ以上は…これ以上はダメだ!うん、年齢制限に引っかかったら大変だ!みんなの為にもごちゃエピの為にもストップしよう。こういうのは同人誌で!アンダースターン?)
え…ひぃ!?壁の上から女の子がこっち見てるうう!剣持ってるしいい!
でも色っぽいかも♥
不埒な男共め…!怪しいと思ったら案の定…!しかも懲りてないようだなぁ!
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!
(ああ…柔らかい…まるでこれは、ひざまくらのような…オレ、誰かにひざまくらされてるのか…?)
ふふっ。わかってるよ。ジャックくんは私達を守ろうとしてくれたもんね。ありがとう♪
どうしたの?前なんか隠して…ジャック君はボクが着替えさせたから大丈夫だよ?
私達もあの後ちゃんとお風呂に浸かって着替えたから大丈夫♪
この後、ソニアの顔がジャックのトラウマになったのは言うまでもない。
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