27話 末吉VSリオン!男と男の熱き決闘!後編
文字数 3,960文字
前回のあらすじ。
オルガへの悲しみ、後悔、自責、リオンへの怒りに身を任せ、大技を使った末吉。
しかし、あまりの力に末吉の衣服は破れ、
末吉、リオン、オルガとは関係のないごちゃエピ学園の生徒達やゴラゴランのいる校舎とごちゃランドを破壊してしまう。
末吉とリオンの再戦。
末吉は父親との記憶を思い出すと、後悔や自責などの心を捨て、澄んだ目で武器をとる。
そして、その姿はごちゃエピ学園の生徒達の目に触れ、末吉とリオンは声援を送られる。
果たして、再戦の行方は。
****
校庭。
人間、異世界人、ニャルシー、魔族。
多くの生徒による声援が校庭を包む。
【末吉&リオン】
勝者!!!
末吉はスティックで槍を払い、自転して槍の軌道を変え、
リオンは高く飛び、上空から槍で末吉の頭を狙って刺す。
2人はカキン!カキン!と音を立て、お互いに攻撃を喰らわないよう確実に攻めていく。
そんな時、末吉はまた現実世界での記憶を思い出していた。
――ある夏の事。
広い道場に、道着を着た末吉とその父親がいた。
――居間。
木で出来たテーブル、カレンダー、扇風機。
末吉は正座で座る。
――居間。
――ある雪の降る日。
病院。病室。
『ははは!いいねその顔!!
お前の父ちゃんがいつも俺を追い返すからこうなるんだ!!
だがどうする?証拠は何もねぇぜ?
俺を裁く奴は1人もいねぇんだ!!
ざまぁみろ!ざまぁみろ!!ははははははははははははは!!』
――末吉の家。
道場。
――現在。
リオンとの戦いの最中、自分の攻撃で壊してしまった学園の校舎を見る。
気が付けば、末吉とリオンはお互いに笑顔を浮かべていた。
人でありたい、勝ちたいという気持ちを乗せ、
末吉を知りたい、勝ちたいという気持ちを乗せ、
やがて同じ疑問を抱く。
それは……。
お互いの力を全力でぶつけ合いながら、末吉とリオンは最後の攻撃に出る。
いつしか芽生えた友情を確かめ合うために。
そう言うと、リオンは大きく後ろに飛び、青いオーラを纏い全身の力を解放。
校舎の3階ほどの高さまで飛び、槍を構えると末吉に向かって突っ込む。
対する末吉は胸に手を当て2.3秒。
大きく深呼吸をすると、青い炎を纏った球をコントロールしてスティックを宙に浮かし、浮力を安定させてスティックに乗る。
すると、青い球で支えたスティックは一直線にリオンの方へ向かって突っ込む。
さらに、2本目のスティックを召喚し、ただ目の前を見つめて構えた。
そう言うと、自身の力の一部を変換するリオン。
変換された力は青い光の弾丸のような物になり、数十本の光が雨のように降り注ぐ。
末吉は空を大きく旋回。
校舎の近くを離れ、上空へ飛ぶ。
そのまま雨のように降り注ぐ光に突っ込む末吉。
しかし、まるで糸を縫うように光と光の間を抜ける。
するとどうだろう。
数十本の光はお互いに当たり爆発、ついには3本となった。
やがて、2人の大きな力は激突。
2つの彗星のような塊は、凄まじい衝撃波を生みながらお互いを削っていく。
大きく叫び、さらに勢いを付けて突っ込む末吉。
しかしその瞬間。
なんと、末吉の持つスティックにピシッとヒビが入ってしまった。
その瞬間、スティックがふわっと軽くなり、
胸の奥が熱く、涙が込み上げてくる。
溢れた涙は頬を伝い、スティックに落ちた。
そして、支えてくれた皆に一言呟き、最後の力を振り絞る。
真っ白な光に包まれるごちゃエピ学園。
そして、ごちゃランド。
美しい学園のシンボルマークもメリーゴーランドも観覧車も、今は涙に濡れ輝いている。
「あぁ、なんて綺麗なんだろう」。末吉は不思議な学園に迷い込み、オルガや両親と出会えた奇跡に心から感謝した。
そして…………。
ごちゃエピ学園の校舎をバックに、
男同士の熱い握手をする末吉とリオン。
たとえ異世界に戻っても、
たとえ異世界人と帝国の幹部に戻っても、
きっとまた友と呼べるその時を信じて。
****
日本。
末吉の家。
プルルルル プルルルル
この後、意識不明だったはずの末吉の母親、綿貫ウメは意識を取り戻し無事に退院。
諦めかけていた源次郎は剣道の大会も道場も断念していたが復活。
一方、綿貫ウメを階段で突き落とした男は自ら警察に出頭。
何度も末吉の家に来ていたのは「綿貫家の家の一部を買い取り、旅館にするつもりだった」と供述。
しかし、後日源次郎とウメは男を無実とし、男は改心。源次郎の弟子になり、道場の手伝いをしているんだとか。
……さて、この「奇跡」とも言える変化。
末吉とリオンの友情によるものか、本当に奇跡なのか、果たして。