#21 【照隠】パイナップル頭のくせに生意気だ。
文字数 3,803文字
つるてかの宿。
男子部屋。
勇輝は、温泉であったことを全て話した。
て、てててててててててて…!帝国の幹部の仲間に……!!
プロポーズしたあああああああああああああああああああああ!??
大変だよそれ!!っていうかなんで温泉に帝国の人がいるの!?早くここを出ないと危ないよ!!
お前ふざけんなよ!見損なったぞコラ!なんで相棒のオレを呼んでくれなかったんだよ!全裸でプロポーズとかもう最高じゃないか!そんなんどんだけエロ…いやエロ…!
うはあああああああああああああああなんって羨ましいんだああああああ!!
『な、なななななななななななに言ってんだいいいいいきなり!?ああああ頭おかしいんじゃないのか!?』
『い、いや!オレは本気だ!!いや本気です!!!
一度でいいからキミのようなデカくてヤヴェー美人とお付き合いしてみたかった!!!』
『デカくてヤヴェー!?あ、あんたバカにしてんのか!?
勢いでそんな事言ってたらタダじゃ済まさないぞ!!大体名前も聞いてないし…!!』
『オレ!!!藤崎勇輝って言います!!!よろしくぅ!!!』
(かっこいいじゃん!!!
どうなってんだよ!?めちゃくちゃドキドキする!!鎮まれあたしの胸のドキドキ!!
そうだ深呼吸!)
(そんなわけあるかよかっこいいよクソおおおおおおお!
もう限界だ!!!)
『保留だバカヤロおおおおおおおおおお覚えてろおおおおおおおおおおおお!?』
『保留!??
あっちょっと待っ…………。行っちゃった……。』
本当にその子の事好きなのかよー!一目ぼれってやつなんだろー!?羨ましいぞコノヤロー!!
『勢いでそんな事言ってたらタダじゃ済まさないぞ!!』
(ほとんど勢いで言ってしまった…!オレ最低の男だ…!
あの子顔真っ赤だったしOKしてくれるかもしれないけど、オレの気持ちは…!
はあああ…!かっこいいって言ったのは本音だけどどうしてプロポーズなんて…!
どこの誰だかわかんないけどもう二度と会えない…!!)
オレも羨ましいなぁ~。一度でいいからかわいい女の子と付き合ってみたい…。
なんだよオレだけ非リア充かよー!いいよいいよ、オレはさくらちゃんの温泉まんじゅうを狙いに………あ。
そうだ忘れてた!相棒、さっきオレとジャックが部屋に戻る時見つけたんだけどさ、これ……”忘れ物”だと思わないか?
うん!男子更衣室で見つけたんだ!「謎のカギ」をね!
そう言うと、ジャックはズボンのポケットから金色の小さなカギを出した。
もうわかっただろ?このカギ、例の鍵師の忘れ物、だよな♪
もう少し休んで、後でシャルロットさんに見せてみようよ!
ジャックとコータローは「おー!」と声を合わせる。
しかし、勇輝は浮かない顔をしたままため息をついていた。
****
一方メイは、顔を真っ赤にしたままつるてかの宿を出ると、アーリーナイト城へ戻っていた。
メイ様、どちらにいらしていたんですか!伝えねばならない事が…!
赤くなんてなってない!ドキドキも気のせい!!要件を早く言え!!
(くそくそくそくそ!全部全部アイツのせいだ!!
初対面でプロポーズなんてしやがって!プロポーズなんて…プロポーズなんてええええええええ!!)
あの、そちらは浴室です。食堂に行かれるのでしたら反対側の通路………
(ぜってーーーーーーーーーーーーーーー許さん!!!)
あんたねぇ、あたしは心配して言ってんのよ?
仮にも帝国の一員としてこの城に集められて、事情はどうあれ幹部の「手下」なんだから。言ったでしょ?あたしはあんたに手を出したくないの。いい加減わかってよね。
ふぅ……まぁいいわ。まだ”ボス”にはバレてないと思うし。
それよりメイ、兵士が持ってきたものなんだけど…これ見てくれる?
ん?なんだ、この紙?どっかの知らねーヤツの絵じゃねーか。
”ボス”が言ってたでしょ、「この城のお姫様が仲間を連れて取り返しにくる」って。
そのお姫様を町の目撃者が見たらしくて、絵を描いてもらったの。
メイは、サラから絵を渡されると、パラパラとめくる。
ちょっと、ちゃんと見なさいよ。
この中の誰1人この城の中に入れちゃいけないのよ?顔覚えておきなさい。
いいよ別に。相手の顔なんて見てどーすんだ。全員撃てばいいだろ?
ぷっ。なにそれ?パイナップルみたいな頭してるじゃない。
どう見ても強そうには見えないわね。メイも見なさいよほら。
いいって言ってんだろ?ちょっと1人にしてくれ。胸が痛いんだ。
んなっ!??んなわけねーだろバカ!あたしなんかが恋なんてするわけねーーーの!!!
バーーーカ!バーーーカ!
あーーー熱いよ!赤いよ!何が悪い!?あたしは悪くないんだいいだろ!?
動揺ついでに見なさいよ。
このパイナップルみたいな頭してる男、変でしょ?
あーーーそうだな!変だ変だ!なんでそんなあた……ま………して………
パイナップル頭の男の絵を見るメイ。
その瞬間、顔が真っ青になり、固まる。
あれ?ちょっとメイ返事しなさいよ?どうしたの?おーーーい?
『オレ!!!藤崎勇輝って言います!!!よろしくぅ!!!』
****
一方、アーリーナイト城。
こころ、もみじの前に、謎の男性が大きく笑っていた。
【ダル】
はっはっはっはっは!驚かしてすまんかったのう!ワシはダル!
動くのダルい!美女のボイン大好き!
生まれて数万年の神じゃ!!
そうじゃ。本当の名前は長いから思い出せんが、ダル様と呼べ!ほっほっほ。
なによりダルい!!!
ん〜?お主、人間ではないようだが……フム、まだお子ちゃまと言ったところじゃな。A!
お主、死人か?実体が半分あるようじゃが……フム、なかなかいい発育じゃ。C!
当然じゃ!
2人とも困っているのじゃろ?ワシに任せておきなさい。
どこも怪しくなんかないわい。ワシは心優しき神、慈悲深さは「ゴッドグランプリ」で金メダルを獲れるくらいじゃ。
怪しさしかない……このおじいちゃん大丈夫かなぁ……
ワシを人間の老いぼれと一緒にするな!
まったく、近頃の若者は信用する気がないというかなんというか……せっかくワシがこの城について教えてやろうというのに……
そうじゃ。
この城はアーリーナイト城。今帝国の奴らが占拠しているのには理由がある。
もしかして、もみじちゃんが言っていた実験のこと…?
左様。この城には大量の武器があってな?
人間以外の種族には、異世界人に近い力があるそうなんじゃ。
そうだよ!もみじちゃんね、ここに連れてこられたんだって!
あぁ、帝国の奴らがここに攻め込んでからずっと見てたわい。
背の高い兵士に連れられてここへ来ていたのう。
(春風こころ……生前の記憶はないようじゃが性格はそのままか……)
わかった、この城を脱出してみるか。
見つかると危険じゃから――
わぁい!おじいちゃんありがとう!
もみじちゃん、やったね♪
ウチも手伝うよ!
いやなんでもないわい。
さて、作戦会議と行こうかの!
****
つるてかの宿。
ジャラジャラと音を立てて、1人の少年が訪ねてきた。
【ビット・オーヴィ】
あぁ、えーと、カギなんですけど………♪
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