#11 【危機】脂肪ブラザーズと小鳥の不吉な予感!
文字数 3,797文字
ある日。とても天気のいい快晴な日だ。
カジノに行かず、家の中で寝っ転がらず、のんびりモンスターの討伐でもしていたい、そんな日。
……いや、モンスターの討伐なんてしたくないんだけど。怖いし。
まぁとにかく、そんな気分のいい日に、"彼ら"は、いや"彼女"?うーん、どっちなのかは想像しちゃダメだ。
そう、想像するのもダメ、出会うのもダメ、まして襲いかかりでもしたら返り討ちに遭う。
そんなモンスターよりも恐ろしい、"招かねざる客"が、
店員も客も普通で、オレにとってハーレムな酒場「グラスオーヴィ」に来るなんて……
うう、ソニアちゃんのあの顔よりも恐ろしいかもしれない。一体、どうなっちゃうんだ!?
ふぅ。女の子しかいないからって女子トイレしかないなんて、慣れないよなぁ…
まぁ自分で女子トイレって呼んでるだけなんだけどさー。
…女子トイレってなんでいい匂いするんだろ。
それに比べて1階のトイレは男子トイレがあるとはいえ、店のお客さんが使うトイレだしなぁ…
そう、これは仕方ないんだよ。このトイレはここに住んでる女の子達のものだし、ってことはオレも使わなきゃいけないじゃない?
それでさ、『ジャック君は男の子なんだからお店のトイレ使ってよ!』なんて言われても困っちゃうわけよこれが。アンダースターン?
まさか。そんなの怖くてできないよ。今のは小鳥ちゃんの…
のわあっ!?ナナナナナナニャちゃん!?一体いつの間にいたの!!まさか全部聞いてた!??
ウチはナナナナナナニャ・ニャルキットって名前じゃないにゃ!これじゃ言いにくいにゃ!バツとしてみんなに言っちゃおーー!
わああああ!?ナナちゃんごめんて!!今のはただの独り言なんだよー!!
ははーっ。ナナ・ニャルキット様〜。神聖なる種族、ニャルシーの女王様〜。
ミノルちゃんすごいんだよー?お客さんにファンもいるんだから。
ミノルにファン?ははーん。わかったぞ。小太りでメガネかけてビームサーベル装備した人だろー。
ひと昔前のオタクだにゃ。ひと昔前といえば、今はオタ芸をするのにサイリウムを持ってるけど昔は素手だったにゃー。アイドルの後ろでオタ芸を打ってた頃が懐かしいにゃ〜
ナナちゃん、よくオタ芸なんて知ってるねぇ…まるでナナちゃんがやってたみたいだ。
うんにゃ。クラスタでやってるライブではみーんなやってるらしいにゃ。
はぁ…ウチも
らいちゃんを目の前で応援してみたいにゃ…
ジャッきゅん、何とかしてほしいにゃ~
たしか"らいちゃん"って星乃未来ちゃんの愛称だよね?
そうにゃ。ニャルシーの勘によると、あの子は小鳥っちと同じだと思うにゃ。うんうん。
気になるのならクラスタに行ってみるといい。このグラーディアから西に行けば着くぞ。
――グラスオーヴィ。1階。
酒場は開店し、人やモンスターの客で賑わっていた。
120回目かな?ごめんなさいね、お断りしてるんです。
あちゃー。断られたの、120回目はオレってこと〜?参ったなぁ〜
(小鳥ちゃんすごいなぁ。やっぱりかわいいから人気があるんだ…)
ん?ナナちゃんどうしたんだろ?なんか騒がしいような?
新しいお客さんなんだけど、赤と白の水玉模様の水着着て、すっごいお腹大きくて、赤紫のツインテールで、(小声)
水着でお腹が大きくてツインテールの女の子?結構かわいいじゃん。それで?
ふんふん。水着でお腹大きくてツインテールでヒゲの生えたオッサン……って!?
ぷはは!そんなんいるわけないじゃん!ナナちゃんおもしろい冗談言うなぁ!まったくそんなのいたら世も末――
(しかもダミ声でなぜかオネエ口調…!ダメだ笑いが…!いやいやお客様なんだから笑っちゃダメだ!耐えろ!耐えるんだジャック…!!)
お、お客さん安心してにゃ!綺麗な店内でごゆっくりどうぞにゃ!にゃふふ…
もう1人いたあああああああああああああああ!!???
(しかもバラ咥えてるし!目つき悪いし!マユゲ濃いし!なぜかネグリジェ着てるし!やっぱりヒゲ生えてるし!)
(バラをもらった…!これが冥土の土産!?あたし死ぬの!?死んじゃうの!?)
んもう〜そんな緊張しなくってもいいわよぉ〜。取って食ったりしないから♪ジャミ子ちゃん、よろしくね♪
(ダメだ笑うなジャミ子…!笑った瞬間打ち首!極刑!
帝国の幹部にやられる前にやられる!せっかくここまで来たのに!
まさに異世界版絶対に笑ってはいけない◯◯だよ!)
…あら?あなた、どこかで見たと思ったら…あの時のボウヤじゃない!こんなとこで何してるの?
****
ジャックは、なぜか謎の2人組と一緒に席に座ることになった。
(ウメダ!?ええと、ウメダで会ったのはグラリオさんと…!)
(脂肪ブラザーズでごわす…脂肪ブラザーズで…脂肪…脂肪…脂肪………)
【ゴワス】
思い出したかしら?アタシ、ゴワス♪ウッフン♪
2人合わせて、脂肪ブラザーズ…でええええええええす♥
あ、安心してジャミ子ちゃん。何か事情があってメイドやってるんでしょ?アタシ達、口は軽いから♪
えっ?あ、ありがとうございます…
"ゲノン帝国エルトーンが壊滅。1人の少女により住民は皆殺し"…
"セント・ブルム城騎士団妖精の町へ調査。解決なるか"…
"フィールの王女数年ぶりに帰還。王女を護衛した英雄現る"…
"ギルドアカデミーに不法侵入者。帝国の影か"…
いいニュースもあれば嫌なニュースもあるわ。特に今最も危険視されているのは帝国。
奴ら、ジャミ子ちゃんと同じ人間を執拗に探してる。(小声)
詳しい話は後でしてあげる。せっかく来たんだもの。注文しなくちゃねぇ♪
そうなんだ!それで、どうしても聞きたい話があって…!はぁ…はぁ…!
にゃ?ジャッきゅん、どうしたにゃ?もう着替えてるにゃ。さっきのお客さんどうだったかにゃ〜?
にゃっ!?ど、どうしたのにゃ…そんなに強く抱きしめたらびっくりだにゃ…
お願いだ。ミノルと一緒に、あのお客さんと話がしたい。
ええと、あそこのお客さんすごい格好してるけど、ジャックさん怖い顔してるから…
(…あの時と同じ顔…でも、あの時よりもっと深刻な顔してる…ジャックくん…あなたは何に怯えているの?何が怖いの?)
――じゃあ、そういう事だから。またねジャック君。美味しかったわ♪
えっ?あ、あぁ、えへへ!なんでもないなんでもない!
メイドさん。早く戻らないとソニアちゃんに怒られちゃうからな!
そう言うと、ジャックは足早に更衣室へ向かってしまった。
…いつものジャック君じゃない…何でかな…?嫌な予感がする……!
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