18話 10秒
文字数 3,432文字
前回のあらすじ。
ソーマは赤い球を手に、轟鬼に触れることに成功。
翔はついに轟鬼の記憶を取り戻し、正気に戻せると確信。
しかし、ヴェイルノートが現れ、轟鬼は「終焉の轟鬼」として覚醒してしまう。
その瞬間、轟鬼に向かって剣が飛んできた。
轟鬼は避けようとせず胸の辺りに剣が刺さるが、剣はすぐに床に落ちた。
今までにない轟音を立て、唸るような声を上げ、フルパワーまで拳を握る轟鬼。
その衝撃波からか、周りの瓦礫は粉々になる。
首を掴まれ、終焉の拳で体を貫かれると死を覚悟し目をつぶっていた翔。
しかし、轟鬼は翔から手を離し、
なんとヴェイルノートに終焉の拳「煉獄拳・終鬼」を発動。
黒い拳による強力なパンチで、ヴェイルノートはガードしたのにも関わらず迎賓の間の奥へと吹き飛ばされてしまった。
オレは大丈夫!!
ブラッドネメシスは体力と記憶を吸う双剣!その効果は使用者だけじゃない!攻撃した相手にも効くんだ!
あの一瞬で轟鬼君の闇の記憶が削れたんだね!ヴェイルノート、一気に吹っ飛んだぞ!もう大丈夫だ!!
ヴェイルノートが吹き飛んでいった方を見る轟鬼と翔。
そこには、ヴェイルノートが不気味に立っていた。
いつまたおかしくなるかわからねぇ……!それにヴェイルノートがいる以上、また闇に染まる可能性がある!
翔、ソーマを連れて上の階に行け!!
「繋がりの間」に行けばヴェイルノートが創ったゲートがある!そのゲートに飛び込めば元の世界に戻れるはずだ!!
ソーマの元に走る琥珀と翔。
翔はスキル爆風を使い、重体のソーマを上の階に連れて行った。
今、迎賓の間に立つのは轟鬼。
そして、ヴェイルノート。
轟鬼は笑顔から、再び終焉の轟鬼の姿になり、拳を握る。
その瞬間、ヴェイルノートは大きく口を開ける。
ぐちゃ……ズル…………
無数の黒い手がゆっくりと這い出ると、ヴェイルノートの身体を包み込み、強大な衝撃波を放つ。
先に動いたのは轟鬼。
大きく咆哮を上げると、爆発的なスピードでその場からジャンプする。
次の瞬間、ヴェイルノートの身体に激しい衝撃が走る。
轟鬼の拳がヴェイルノートの腹部を直撃し、そのまま壁へと吹っ飛ばした。
ヴェイルノートが姿を変えてから5秒、いや3秒だろうか。
メキメキ……メキメキ……!という音を立てながら、ヴェイルノートはまっすぐに壁に向かって飛ぶ。
しかし轟鬼の攻撃は終わらない。
轟鬼は黒い炎で身を包み力を増幅。
ヴェイルノートに向かって高く飛び、ヴェイルノートの頭の上から強烈な連続パンチを喰らわす。
あまりの力に迎賓の間の床が耐えきれず、
地下1階の床に大きな穴が空く。
ヴェイルノート、そして轟鬼はものすごい勢いのまま次々と下の階に落ちる。
地下2階、地下3階。
そして、最初にソーマがいた「秘密の部屋」。
ものすごい音を立てながら、部屋の真ん中に落ちてしまった。
混乱する人々の中、大きな人影が見える。
人影は大の字になり、右手を上げ、大きく叫んだ。
ーー10秒。
轟鬼は、圧倒的な力でヴェイルノートを潰し、元の姿に戻ると力強く吠えた。
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一方、エレベーターに乗ったソーマ達。
ハヤトが残したカギを使い、轟鬼の言った「繋がりの間」を目指す。
エレベーターの扉が開く。
その目の前には…………。