1話 メラニー
文字数 962文字
「ゲノン帝国」。剣士のギルドや魔法使いのギルドから腕のある者を脅迫、
または洗脳して無理やり引き抜き、無敵の武力を誇る。
今や世界中から危険視される帝国だが、国民はそんな国だと思われているなど知る由もなく、街並みは平和そのもの。
人もモンスターも平和な日々を過ごしていた。
高い身分を連想させるエメラルドグリーンの髪。
オッドアイのエルフ、「メラニー」もその1人だ。
ある夜。メラニーは、木でできた小さな宿屋にやってきた。
いらっしゃい。こんな時間によく来たね。お泊まりかい?
【メラニー】
はい。お金が無くて、1番安いお部屋がいいです。おいくらですか?
それだと、100ゴールドだけどお風呂が無いの
女の子でしょう?お風呂付きのお部屋は150ゴールドなんだけど…
そう言うと、メラニーは軽くお辞儀をしてお金を払い、鍵を受け取った。
202と書かれた鍵を持ち、同じ部屋番号の部屋を探す。
ガチャ
部屋の中には木でできたイスやテーブル、小さなベッドなどがあった。
メラニーは思い出す。
それは、自分の家族に対する疑問。
そして、国に対する疑問。
ゲノン帝国の中でも身分の高い貴族が暮らす町「エルトーン」。
白く立派な家に住んでいたメラニーは、魔法剣士として両親から剣と魔法の修行を強いられていた。
しかし、修行の相手は弱いモンスター。
人を襲うわけでもないモンスターを当然のように捕まえ、毎日小さな命を奪っていく。
周りの人間もまた、それを疑わない。
それならば強いモンスターをと親に話すも、
弱いモンスターを「道具」として扱い、
死体となったモンスターをさらに痛めつける両親。
耐えられなくなったメラニーは1週間後、家を出ることを決意。
しかしその2日後、メラニーの友達だった小さなモンスターが殺害される。
お前が言う事を聞かないからだ、仕方のない子ねと笑う親。
1週間後の計画も投げ出し、私服と小さな剣を持って家を飛び出した。
そして、ゲノン帝国が他国の街を滅ぼしたという噂を聞いたメラニーは、自分の家族ではなく国にも疑問を抱いていた。
メラニーは、ベッドで丸くなると、そのまま眠ってしまった。
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