11話 10%の狂気
文字数 4,191文字
すると、メラニーは手をパーにして前に出す。
手のひらの上にはボーリングの球ほどの大きさの炎の球ができている。
チョコはその炎の球を見るとニヤッと笑う。
…が、すぐに後ろの車両の方を見る。
その瞬間、バキバキッという音が遠くから近くへと聞こえてくる。
メラニーは音に気付き、音の方向に向かって炎の球を撃つ。
やがて炎の球と音の正体がぶつかり爆発。
ライカのストライクアームの攻撃に、メラニーの炎の魔法でもはや性別も何もわからない。
そう言うと、ライカはストライクアームからパワーアームに付け直し、メラニーに拳を向ける。
やはりメカでできた赤い大きな腕は、燃えているように見える。
同時に攻撃を仕掛けるメラニーとライカ。
メラニーは凍てつく風の吹き荒れる氷を、
ライカはまるで龍が口を開け食べようとする幻をまとう。
車両は大爆発。ソフィー、シルキーはドロシーの魔法により前の車両の方へ。
メラニー、チョコ、そしてライカは煙が舞う中、大破した車両に乗った。
ゆっくり小さく、しかししっかりと呟き、ドロシーに託したライカ。
その手には、攻撃に使ったボロボロのパワーアームが付いていた。
そしてライカの背後には、炎と氷の塊を構えるメラニーと2体の死体を操るチョコの姿が…。
――蒸気機関車は、皮肉にもスピードが衰えず走り続ける。
走り抜ける美しい川も、山も、今はただ無意味に通り過ぎてゆく。
やがて、海が見えてきた。
残されたソフィー、シルキー、ドロシーは、彼女達にとって帝国の最後の町であり、帝国の玄関である港町アタミへたどり着いた。
酒場。
ソフィー、シルキー、ドロシーはテーブル席に座り、黙り込んでいた。
もしメラニーとチョコから逃れられ、生きていたとしてもゲノン城からの兵士が追ってくるはず…そんなの、いくらライカでも耐えられるわけない…!
ドロシーは、泣きながらバン!とテーブルを叩いた。
その瞬間!
ヴィー!ヴィー!ヴィー!
****
シルキーは、ソフィーとドロシーの手を引っ張り砂浜に走ってやってきた。
砂浜には海水浴の人で満ち溢れていた。
ドロシーは泣き叫びながらソフィーに向かって魔法を唱える。
シルキーは焦ってソフィーの前に大の字になって立った。
ブワッと風が舞う。
ドロシーの涙を拭うように、シルキーの纏う羽衣がドロシーの頰を優しく撫でた。
大破した蒸気機関車の中から、体中血まみれのチョコが這い出てきた。
折れた足を引きずり、「エヘヘ、エヘヘ」とニヤニヤしたままゆっくりと歩き出す。
…生首を手に持ち、呟いた。