25話 綿貫末吉、友との別れ。
文字数 5,645文字
ごちゃランド入り口。
末吉は、ゴラゴランが入って行った入り口に到着。
しかし、ごちゃランドのスタッフが入り口を閉めてしまった事により中に入る事が出来ないでいた。
末吉はゴラゴランを見つけ、入り口の鉄格子越しに声をかける。
ゴラゴラン殿!
ボストン君を見かけた時もしやと思ったが……!
おお末吉殿!無事だったか!!会えてよかった!!
安心してくれ!みんないるぞ!!
その瞬間、桃香は高くジャンプするとゴラゴランに渾身のキックを放つ。
ゴラゴランはすぐに強力なパンチを繰り出す……と思いきや、桃香の足をキャッチ。
そのままグルグルとブン回し、「はあああああああ!!」と叫び入り口の鉄格子にブン投げた。
ブン投げられた桃香はそのままの勢いで鉄格子にキック。
鉄格子はガシャアアン!バキィン!という音と共に見事に壊れてしまった。
仕上げに、ゴラゴランは鉄格子をメキョッと曲げる。
桃香くん、これからも精進したまえ!真の道はこれからだ!!
すげーなー!!
あ、青いおっさん、あたしはメイ。よろしく!
メイちゃん、彼は私の仲間だが、彼は”青い”おっさんなのかい?
そうだ!これから4人でジェットコースターに乗らないか!?どうせこの学園に来たのだから遊んで行こう!
なんと!?
では、急いでカギを見つけないとどすえ亭での時間が進んでしまうのか!
これは推測だが、そのカギを見つけ、どこかにある扉を開ける事でこの学園から脱出できるはずだ。
しかし、オルガという子が言っていた。
「先生に気をつけろ」と。
この学園の先生が妨害してくると判断して良さそうだ……。
なるほど!
ということは、そのカギを持っているのが先生の可能性もあるという事か!
うおおおおおおおおおおおお!
出てこい!なぎ倒してやるぞ!!
んー?カギを探せばいいのか先生を探せばいいのかどっちなんだー?
そうだ、オルガ君の紙では確か…「愛とスリルのメリーゴーランド」…!
メリーゴーランドにカギがあるはずだ!
ん?アンタまさか、着いてくるつもりじゃねぇだろうな?
あ?先におっさんに会ったのはあたしだぞ?邪魔すんな。
ま、まぁまぁ2人とも!
気持ちはありがたいが、これは恐らく”私達”の試練!気にするな!
笑顔を見せるゴラゴラン、末吉。
すると、1人の男が話しかけてきた。
その通りです。さすが選ばれし異世界人。
ここから出るにはこの学園の先生を倒し、カギを集めるしかない。
しかし、本当にこの世界から脱出したいですか?
せっかくですしジェットコースターやコーヒーカップに乗ってみませんか?楽しいですよ?
【ヴェイルノート】
申し遅れました。私はこの学園の教頭、ヴェイルノート。
そして、”異世界”では帝国の幹部をまとめています。「幹部のボス」といえばわかりやすいでしょうか?
いい顔をしますね、ゴラゴランさん。
さぁ、いつでもいいですよ?カギはここです。
そうだ。申し訳ないのですが、メイさん、桃香さんには挑戦権がないんです。
そうですね。
この挑戦は、"あなた方5人"のみ。
しかし、綿貫末吉さんの相手は私ではない。
この先のメリーゴーランドを調べてみてください。あなたの相手が現れるでしょう。
私もそう思うよ。ここまで来れたのは皆のおかげなんだ。たとえどんな事が待っていようと、どこまででも行けると信じている!!
ではあなたの力がどれ程か……その自信、どこまで保てるか……
****
一方、3年A組。
禁断の快楽を堪能する紋三郎は、チアガールの格好をしたアルテミアの魅惑の谷間に顔を埋めながらさらなる快楽に堕ちていた。
これがGカップの谷間!ううううう!息ができん!
はぁ~……もうワシ、ここから出れなくてもいいわい……❤︎
【アルテミア】
あは~ん❤窒息しちゃったら大変でちゅよ~?
私達のボンキュッボンに釘付けだけどぉ、息継ぎしないと大変~❤
頑張ってぇ~❤
アルテミアちゃんのツヤツヤでぽよぽよでタプタプでツルツルなボインちゃんで応援されたら息継ぎできないでちゅ❤さすが魔界のチアリーダーでちゅ❤
そんなに褒められたら、もっとサービスし・ちゃ・う❤
あ”あ”あ”あ”~!ワシの〇〇〇が〇〇〇してしまう~~~~!
【スカーレット】
んもう、”もんちゃん”?あんまり過激な事言ったら偉い人に怒られちゃう❤
頭の中すっかりトロトロになっちゃってまちゅね~❤
【デミア】
もんちゃん、アイス食べまちゅか〜?
はい、あ〜ん❤︎
(はあああ〜ここは天国じゃあ〜!ワシの好みのボインちゃんがワシの好みのシチュエーションを実現してくれる〜〜!どうしてワシの好みを知っておるのかのう〜〜?)
アルテミアの谷間に溺れ、デミアのアイスを幸せそうにチュパチュパする紋三郎。
とても甘くて冷たい。
しかし何故だろう、どことなく凍えるような寒さを感じる。
紋三郎はそう思い、教室を見渡す。
ボイン、ボイン、ボイン、ボイン、ボイン。
どこを見てもマシュマロのように柔らかそうな大きな胸しかない。
気のせいだったのだろうか。
男性より体温が高く暖かいはずの女性の、それも至高の美肌だというのに、冷たいはずがない。
そう思った瞬間、
もんちゃん、いや紋三郎はゾッとした。
どうしたんでちゅか〜?
せっかく笑顔なのに顔が真っ青でちゅよ〜?
紋三郎はサッと視線を外し、"あるもの"を視界から消した。
そう、見てしまったのだ。
教室の扉の曇りガラス、その向こうにうっすらと見える"何か"の顔を。
いや、「うっすらと」ではない。
はっきりと、恐怖と威圧感を与えるような容姿。
ブホッ!?
ゴホッゴホッ!ゲホッゲホッ!ん”ん”ん”っ!!
まだいる……!幻ではない……!
お、落ち着いて深呼吸深呼吸。
決して関わってはいけない。
決して目を合わせてはいけない。
決して見てしまった事を気付かれてはいけない。
平常心を保て。平常心を保つんだ。
何でチラッと見てしまったんじゃ!
ワシのバカ!ワシのバカ!
な、何だこの音…?
やばい。やばい。やばいやばいやばいやばい。
「奴はやばい」?どうしたのもんちゃん?すごい汗かいてるじゃない。
いや!いや!見えてない!見えてないぞ!?
なーーーんにもぜーーーんぜん見えとらん!!これーーーっぽっちも!!ほんとに!!
焦る紋三郎。
扉の向こうにいる"何か"に聞こえるよう、あえて大声でアピールする。
よし、もう一度。
ワシ眠くなってきたわい!もう何も見んし何も聞こえないぞ!?おやすみ〜!
来るな!!嫌だ!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!
****
一方、ここはごちゃランド。
末吉は、メリーゴーランドの馬の足元にキラリと輝く、小さな宝箱を見つけた。
何も入っていない……!?
なぜだ!?たしかにあの紙はメリーゴーランドの事を指していたはず……!
仕方ない、先生もいないようだし一度オルガ君の所に戻ろう。
――3年C組の前の廊下。
教室の扉の前を囲むように、人だかりができていた。
なぜだろう。胸騒ぎがする。
末吉は人をかき分け、教室へ入ろうとする。
荒らされた机と椅子。
倒れた教卓。
割れた窓ガラス。
そして、デコボコになったロッカーの前に倒れているオルガの姿があった。
末吉はオルガへ駆け寄る。
オルガの胸には槍が貫かれ、大量の血を流している。
すると、オルガはゆっくりと目を開け、小さな声で呟いた。
そう言うと、オルガは笑う。
血の付いた手で末吉の頭をゆっくりと撫でた。
大丈夫なわけがないだろう!!
この槍は何だ!何があったんだ!!
くっ……!保健室まで保たないかもしれない……!誰か治癒魔法を使える者はいないのか!誰か!誰か!!
観覧車、見る……
「あと10:40」書いてある……
あれは残り10時間40分……これが0になった時、完全封鎖……ここから出られなくなる……
この世界、進む時間早い……
だから……末吉、急いで…時間ない……
オルガの笑顔に、末吉の涙が落ちる。
なぜだろう、こんなにも涙が溢れるのは。
なぜだろう、こんなにも悔しいのは。
末吉は槍を抜き、オルガを強く抱きしめる。
……オルガの死。
末吉は泣き叫び、深く後悔する。
もっと早く教室に戻っていれば、
いや、オルガがメリーゴーランドを示した紙を渡してくれた時、あのまま教室にいればこんな事にはならなかったのだろうか。
なぜ、ヴェイルノートが言っていた「挑戦権」を持つ者ではないオルガが死ななければならなかったのか。
こんな事が許されていいのか。
末吉は綺麗な笑顔のままのオルガを強く抱きしめながら、怒りに震えた。
****
数十分後、校庭。
ごちゃランドの観覧車には「7:35」と書かれ、オルガの言った制限時間が7時間35分である事を示している。
末吉はそんな観覧車には目もくれず、教室でオルガを抱きしめた後の会話を思い出す。
『【グラリオ】
そうか、君が綿貫末吉というのだな……。
私はグラリオ。ノエルくんと一緒に学園の風紀を守っているのだが、こんな事になるとは……。』
『そのオルガという生徒は、君の居場所を言わなかった……。』
『君が教室を出て行った後、リオンという少年がこの教室を訪ねてきた。
リオンは自らを先生と名乗り、「末吉という人間を探している」と言った。』
『しかし、その子はさっきまで話していたはずの君を「知らない」と答え、君の事情を知っていたのか「代わりにおれがやる」と呟いた。そして……。』
『"異世界"での彼は帝国の幹部の1人。本来はオルガという生徒との接点はない。
そして、この学園での彼は先生という立場。
……そのはずなのだが、彼はオルガという生徒に手を出した後、「これ」を捨てていった……。』
『そうだ。
リオンは文字通りその子を「代わり」にすると、このカギと「先生」という立場を捨てたんだ。
リオンは最後にこう言っていた。』
『【リオン】
先生はもう辞めます。異世界人には興味ないので。』
『オルガ君は恐らく、リオンの力が強すぎる故「君と戦わせたくない」と判断したんだ。その判断は正しい。』
『君が悔しいのはわかっている!許せないのもわかっている!!疑問を抱くのも当然だ!!私も同じなのだから!!
しかし、どうかこのカギを受け取って欲しい!!』
グラリオは悔し涙を浮かべて土下座。
力強く、はっきりとした声で叫ぶ。
『頼む!!このカギを受け取り、リオンと戦わずに先へ進んでくれないか!!!
君の挑戦は終わった!
なぜならカギはここにある!!
君の残りの仲間が他の先生のカギを手入れれば、君達はここから脱出できるんだ!!!』
――すまない、グラリオ殿。やはり私には無理だ……。
そしてゴラゴラン殿。あの約束、果たせそうにないようだ……。
…………ああ。
あなたが綿貫末吉、ですか。やっぱりいたんですね。
でも、もういいですよ。
カギ、持っていますよね?どうぞ先へ進んで下さい?私の役目は終わったんです。
なぜ殺す必要があった?そこまでする必要はあるのか?
そもそも私は好きで先生という役になったわけではない。
先生となるのはランダムなんです。さっさと役目を終えて、のんびりしたかったんです。
でも死んでしまうとは思いませんでしたね。
あぁそうだ、知ってましたか?
あの生徒、ゴーレムという種族なんです。
ゴーレムは岩石のように硬い体をしていて、並大抵の物理攻撃は受け付けない。
でも、まだ子供だったんでしょう。
あまりにも……
……グラリオ殿にカギを預けて正解だ。
きっとゴラゴラン殿が代わりに受け取ってくれるだろう。
だが、私は一緒には行けない。
どうしてもやらねばならない事がある。
たとえタイムリミットを過ぎても構わない……!
何ですか……?溢れる力を感じる……。
あなたは一体何者ですか?
私の名は綿貫末吉。
友がこの世界から脱出しても私の事は覚えておけ。
貴様を討つ者の名だ!!!
――
ごちゃエピ学園ハイエンド完全封鎖まであと
6時間。
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