15話 鬼の暇つぶし
文字数 4,868文字
地下4階。
ローラン達はエレベーターで倒れていたヴェルグの治療をするために、エレベーターに乗らず、部屋に戻っていた。
すると、琥珀はヴェルグを見て驚く。
そう言うと、琥珀はヴェルグに向かって手を出す。
すると、優しい光がヴェルグの体を包み込んだ。
すると、ヴェルグが目を覚ました。
立ち上がるローラン、メルトン、ソーマ、オズマ、ハル、ヴェルグ、琥珀。
一行はハヤトのカギを使ってエレベーターを動かし、地下1階へと向かう。
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研究所。
地下1階。迎賓の間。
豪華なイスに座り、帝国幹部、轟鬼はワインを飲むと何かを思いついたかのように立ち上がる。
彼は、「暇つぶしだ」と呟き、研究所内の兵士の頭をガッと掴む。
無慈悲な鬼は、手に力を入れ兵士の頭蓋骨を粉砕。
兵士は「”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」と断末魔を上げ、必死にもがく。
手や足をバタバタと振ると、轟鬼の手に2、3回当たった。
ゆっくりと、鬼の顔が歪む。
自分の死を察して必死に扉を叩く兵士達。
もがいていた兵士は、もう動いてない。
ただ鬼の手で掴まれ、宙をブラブラと浮いているだけ。
死の瞬間を待つのみの哀れな兵士達に、鬼は兵士を投げるため振りかぶり、
…………笑った。
その瞬間、鬼は兵士の体を炎で焼き、野球のように兵士の体をブン投げる。
部屋の扉に向かって一直線に飛ぶ燃える兵士は、そのまま扉を突き破った。
立ち込める煙、焼ける匂い。
轟鬼は笑い、力を溜めて叫んだ。
その瞬間、高笑いをしたハルが轟鬼に向かって一直線に飛び、ラブ・フォーエバーを振る。
ガキィン!
それを拳で受け止め、軌道を変える轟鬼。
すぐに攻撃が来ると察したハルは、2、3度後ろにバック転し距離を取る。
ハルは部屋の外にアイコンタクトをする。
部屋の外では、琥珀が兵士を治癒し、ローランが逃げ道を確保。エレベーターへ誘導していた。
ハルは、ラブ・フォーエバーを床に刺す。
すると、床が盛り上がり、ドドドドドと轟鬼の足元へと迫る。
轟鬼は壁を殴り、落ちてきた瓦礫を炎で燃やす。
燃え盛る瓦礫はメテオのようにハルに降り注ぐ。
ラブ・フォーエバーを抜き、急いで走るハル。
ズガン!ズガン!と降ってくる瓦礫を見極め、ギリギリ避けている。
すると、オズマが部屋に入り、光り出す。
オズマは、雷の力を溜めてソーマのブラッドネメシスへと流し込む。
赤と黒の双剣は、電撃を帯びて光っている。
降り注ぐ瓦礫を斬りながらハルに向かって走るソーマ。
斬られた瓦礫は、電撃による力か空中に浮かび、炎と電撃を帯びている。
轟鬼はニヤリと笑い、力を溜める。
するとどうだろう。瓦礫を飛ばすはずのハルとソーマは、ブラッドネメシスとラブ・フォーエバーを手から離し、轟鬼へと吸い寄せられていく。
ハルは危険を察してソーマの手を引っ張り、部屋の扉へとぶん投げた。
ハルと轟鬼の距離はもうない。ハルのすぐ目の前に、轟鬼の体があった。
振りかぶる轟鬼。
マグマのように煮えたぎる拳を、ギリギリまで力を込める。
ドッッッ………!!
ハルの顔に拳が当たると、あまりの衝撃に脳が、頭が、顔が揺れる。
そのままハルの体は燃え、部屋の壁に向かって一直線に吹き飛んだ。
ヒュン…………ズズン!!
ソーマはパニックになり、ブラッドネメシスも持たず、闇雲に走り出す。
そう言うと、轟鬼はソーマの頭を掴む。
兵士の頭蓋骨を砕いたように。
ふと、轟鬼は何かに気付く。
それは、ヴェルグがソーマに渡した赤いお守り。
ソーマの頭を掴んだ轟鬼は、そのまま高くジャンプし、ソーマの頭を下にした状態で空中から勢いよく落ちる。
ズガァァン!!
ヴェルグは走り出すと、轟鬼にパンチをする。
が、簡単に受け止められた。
一瞬の焦りを悟られたのか、轟鬼のパンチを喰らうヴェルグ。
腹部を狙われ、ガハッと血を吐く。
血を吐きながら叫ぶヴェルグ。
渾身のパンチを轟鬼に与える事に成功した。
しかし――
轟鬼はヴェルグの拳を受け止め、力を込める。
けれども、ヴェルグは激痛に耐えながらも空いている方の手でパンチを繰り出す。
一瞬、轟鬼の動きが止まる。
その瞬間、オズマは死を覚悟した。
轟鬼の手がヴェルグの体を貫き、大量の血が辺りを染める。
ヴェルグはブン投げられ、部屋の扉の横の壁に当たる。
ゆっくりと迫る轟鬼。
そして…………。
ズガァァン!!
………まさに絶望。
綺麗だったはずの迎賓の間は、轟鬼の猛攻を受けハル、ソーマ、ヴェルグ、そしてオズマが倒れている。
壁と床もところどころ壊れ、ソファーや机も粉々になっている。
残されたのはローラン、メルトン、琥珀。
彼らに戦意など、すでに無い。