20話 運命のエレベーター
文字数 3,919文字
前回のあらすじ。
ソーマのブラッドネメシスによって一時的に正気を取り戻した轟鬼は、ヴェイルノートを食い止めるため迎賓の間に残る。
翔、琥珀はその隙に迎賓の間から脱出し、ローラン達と一緒に「繋がりの間」を目指しエレベーターに乗ると、轟鬼がヴェイルノートと戦っている事、後から追いかけると言っていた事を説明する。
やがてエレベーターが3階で止まり、
目の前に「底辺実況主の異世界転生の話」でグラーディアにいたはずの脂肪ブラザーズの1人、ゴワスが現れる。
一方、轟鬼は圧倒的な力を見せ、
あまりの衝撃に床が抜け最初にソーマのいた「秘密の部屋」まで落ちてしまったが、見事ヴェイルノートを倒し、部屋にいた人々を「繋がりの間」のゲートから現実世界へ帰すことに成功。
そして、ヴェイルノートは仰向けになり、
元々はゲノン帝国幹部ではなく研究所の職員だった事、異世界と現実世界を繋ぐゲートを発明した事、皇帝の娘であるアストリアと日本で楽しく観光していた事、「ゲートを使って人を異世界に連れてきた後捕らえて殺す」という皇帝の計画などの過去を思い出す。
そんな時、秘密の部屋の扉が開き……
ヴェイルノートに手を差し伸べ、笑顔を見せる轟鬼。
ヴェイルノートは感動し涙を流すと、良心を取り戻し、
ゲートを壊して皇帝の計画を阻止する事を決意する。
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研究所。3階。
ゴワスは思い出す。
それは、ヴェイルノートから忘却の古戦場の武器を渡すため、ヴェルグが招待された時の事。
(きつねっ娘とお菓子屋の話13話より)
険しい顔でヴェイルノートとの会話を思い出すゴワス。
それは、皇帝には決して知られてはいけない秘密。
この世界に来た人間のためのゲーム要素だよ。日本じゃ剣や魔法はないけど、この世界にはある。そこでヴェイルノートは「ゲームに出てくるような建物がダンジョンとしてあったらおもしろいだろう」、そう思ったのさ。
オマケに、ダンジョンの中には簡単に強くなれる武器が眠ってる。この世界に来た人間が簡単に死なないようにね。粋な計らいだろう?
皇帝の命令だよ。
ゲノンムルグ城からの招待を受けた時、幹部にもならず武器も受け取らなかっただろう?断った者はその場で殺せって話よ。
それだけじゃない。ウメダでグラリオを襲った後、ここへ戻って来ただろう?来なければ戦わずに済んだのに……
するとゴワスは、白衣のポケットから小さな輪っかを取り出した。
スイッチを押し、大人が通れるくらいの大きさになった。
そう言うと、ゴワスはスイッチを押す。
大きなゲートが虹色に光ると、ヴェルグは叫びながらゲートの中に入ってしまった。
ゴワスはスイッチを押しゲートを小さくすると、ポケットに入れた。
全員はエレベーターを見る。
地下1階、1階、2階と、ランプが点いていく。
ソーマ、そしてゴワスの言葉を聞き、全員に緊張感が走る。
ゴワスは、何故か高まる心臓の鼓動に違和感を感じていた。
…………チン。
ゆっくり開くエレベーターの扉。
それに合わせて翔とゴワスは名前を呼ぶ。
………………。
最悪のシナリオというのは……いつでもイメージしておかなければならない……。