第4章 第6話
文字数 738文字
そしてその日が来た。
天気は曇天。やや蒸し暑い。我が川越中央高校のグランドは三年前から人工芝が敷かれており、然しながらピッチ上は太陽の照り返しもなく、この季節にしては中々のコンディションだ。
試合開始は十四時。その一時間前に江戸学園高校のサッカー部員が我が校に到着する。引率の大柄なコーチがこちらにゆっくりと歩いてくる。伝説のジョーさんだ。
「おいおい、いつからこんな立派なグランドになっちゃってんの!」
顧問の山寺先生がジョーさんに近寄り、固く握手をする。
「おい下条、まさかAチームじゃないだろうな?」
先生としては冗談で言ったつもりだったのだろう。
「まさか。そんな訳ないでしょ、コイツら相手に。」
ジョーさんがムッとした顔で言い放つ。その場が凍りつく。
「ウチ、Dまであるんですよ、当然今日はそのDですから。それとも、Cとか連れて来ればよかったですかね?」
「い、いや、オマエのところならDで十分だよ……」
「は? 十分って? え、まさか勝つ気でいたりしちゃってんすか?」
「ははは… まあでも、今日ウチは早乙女出すからー」
「ああ、埼玉選抜の… おお、久しぶり」
「こんにちは、今日はよろしくお願いします」
「へーー。背伸びたな。オマエ、ウチの大学受けねえの?」
「あー、私立文系狙いなんで… 国立はちょっと…」
「ふーん。ま、今日のプレーしっかり見せてもらうわ。でも、な、こんなチームでオマエ一人いても、な。ハハ、オマエも俺の気持ち、わかんだろ?」
「全然わかりませんけど」
「は?」
「ウチ今日、勝ちに行きますんで」
「ウケるわオマエ!」
「一年坊主に、負ける訳いかないんで。じゃ後で」
山寺先生が思わず吹き出す。ジョーさんの目が勝負師の目に変わっていく。望むところだ。まあ見てろよ、オッさん。
天気は曇天。やや蒸し暑い。我が川越中央高校のグランドは三年前から人工芝が敷かれており、然しながらピッチ上は太陽の照り返しもなく、この季節にしては中々のコンディションだ。
試合開始は十四時。その一時間前に江戸学園高校のサッカー部員が我が校に到着する。引率の大柄なコーチがこちらにゆっくりと歩いてくる。伝説のジョーさんだ。
「おいおい、いつからこんな立派なグランドになっちゃってんの!」
顧問の山寺先生がジョーさんに近寄り、固く握手をする。
「おい下条、まさかAチームじゃないだろうな?」
先生としては冗談で言ったつもりだったのだろう。
「まさか。そんな訳ないでしょ、コイツら相手に。」
ジョーさんがムッとした顔で言い放つ。その場が凍りつく。
「ウチ、Dまであるんですよ、当然今日はそのDですから。それとも、Cとか連れて来ればよかったですかね?」
「い、いや、オマエのところならDで十分だよ……」
「は? 十分って? え、まさか勝つ気でいたりしちゃってんすか?」
「ははは… まあでも、今日ウチは早乙女出すからー」
「ああ、埼玉選抜の… おお、久しぶり」
「こんにちは、今日はよろしくお願いします」
「へーー。背伸びたな。オマエ、ウチの大学受けねえの?」
「あー、私立文系狙いなんで… 国立はちょっと…」
「ふーん。ま、今日のプレーしっかり見せてもらうわ。でも、な、こんなチームでオマエ一人いても、な。ハハ、オマエも俺の気持ち、わかんだろ?」
「全然わかりませんけど」
「は?」
「ウチ今日、勝ちに行きますんで」
「ウケるわオマエ!」
「一年坊主に、負ける訳いかないんで。じゃ後で」
山寺先生が思わず吹き出す。ジョーさんの目が勝負師の目に変わっていく。望むところだ。まあ見てろよ、オッさん。