第8章 第9話

文字数 643文字

 オレが何をした訳でもない。しかし歴史は平行線ながらその様相が少しずつ変化するのだ。今回の駿太のことでオレはハッキリと自覚した。

 従って元の世界のままに行動していてはこの世界では通用しない。この世界に応じた立ち振る舞いが要求される。

 オレは変わった、と周りから言われて久しい。母親は唯一人この事実に気付いている。二年前のオレ、即ち二十歳の頭脳と魂のオレが十八の今のオレであり続けるには、この様にオレ自身が変化しなければならない。

 二年前のオレ。自分の事しか考えれなかった。自分の試験に集中するあまり、水月の気持ちを受け入れることが出来なかった。

 二年前のオレ。洋輔の事故後の本当の苦しみに目を瞑り、口先だけで励まし同情していた。

 二年前のオレ。インフルエンザで試験を受けられなく浪人を余儀なくされた駿太を口先だけで励まし同情していた。

 二年前のオレ。上司の失態をひっかぶり左遷される親父にただ呆れるだけだった。

 二年前のオレ。好きでもない、惚れてもいない里奈を弄び、妊娠させその後の人生を悲観していた。

 今のオレ。里奈とは適切な距離を取り付き合って行こうと思う。

 今のオレ。仕事を干され気味の親父に四月からオレのサッカーを見せたいと思う。

 今のオレ。コロナウイルス罹患で延期された受験日まで、ガッチリ日本史を駿太に叩き込んでやると誓う。

 今のオレ。明日の洋輔の受験に、栗栖さんと共に付き添う事にした。

 今のオレ… 明後日の水月の試験後、家まで送って行き星野家で試験お疲れ様会に出席する。
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