第8章 第11話
文字数 734文字
「星野さん。実は僕、美月さんと将来のことを真剣に考えています。」
我ながら結構凄いことをサラリと言ってのける。案の定星野さんは口をポカリと開け、奥さんは目を皿のようにまん丸に開き口を手で覆う。
当の水月はー 意外にも冷静に俺の話を聞いている。
「あくまでも試験に合格し、四月に晴れて二人入学したらの話なんですが。僕は水月さんと同居したいと考えています。僕はこの半年彼女と共に過ごし、大きく成長出来ました。そして今回の試験も必ず合格する自信があります。それは全て美月さんと共に頑張れたからです。もし学生生活を彼女と共に過ごせたらー必ず最高の学生生活を送れる自信があります。同時に、彼女にとっても最高の学生生活を送ってもらう自信があります。まだ早いのではーそう思われるかも知れませんが、僕はこう思いますーもっと早く彼女と出会いたかったーそうすればもっと凄い高校生活を送れただろう、と。それ程僕にとって彼女は、そして彼女にとって僕は互いの成長に不可欠な存在なのです。如何でしょう、娘さんの成長の過程を見守っていただけないでしょうか?」
途中から目を瞑りながらも、俺の話を一言も逃さず星野さんは聞いてくれた。
奥さんは先程以上の大粒の涙をボロボロ溢している。
水月はー
ああまただ。なんて優しげで穏やかな表情― あの日二人で呆然と眺めたあの像の如くー
星野さんも水月の表情に気付きずっと見つめている。その神々しい程の微笑みを。その思わず縋りたくなるほどの優しさを。
そこには凡俗な意見を拒絶する神聖なオーラが揺れめいている。
どれほど時間が経っただろう。星野さんが、
「美月がそうしたいなら。僕は応援するよ。」
寂しげな笑顔でそう呟いてくれる。
水月の瞳から一筋の涙が流れ出る。