第2章 第8話
文字数 1,480文字
神戸橋の交差点を左折し、川沿いに歩いて行くと目前に相模湾が見えてくる。どちらともなく駆け出して、腰越海岸のビーチに入る。受験生には縁がなかった場所だ。自然と心が踊る。
「海なんて超久しぶりだよーー 気持ちいい!」
さっきまでの眠さは互いに吹き飛んだようだ。今はただ海からの風を胸いっぱいに吸い込み、傾きゆく太陽を江ノ島越しに眺めている。
真っ青な空と海。吹き抜ける海風。
そして隣の星野美月。
嬉しそうに海を眺める彼女は今何を考えているのだろうか。
俺たちは水際をブラブラ歩いている。彼女が先頭で俺はその少し後ろを歩いている。互いに何も言わず、ゆっくりとした足取りで初秋の夕暮れの海を感じていたその時。
突如、一羽のトンビが彼女の目の前を、本当に彼女スレスレに、通り過ぎていった。
「きゃっ!」
彼女は急に後ろに飛び下がる。もし俺がもう少し距離を開けていたら見事なバックステップとなっていただろう。だが残念なことに、俺との距離はそこまでのスペースを許さず、彼女は後ろ向きのまま俺と衝突してしまう。
そう言えばバスケで県大会出場、と言っていたな。道理でこの素早さ! よし、軽く受け止めてやろ……
ガッツーン
「いってーーー」
顎に衝撃を受け、俺も仰け反ってしまった。彼女の動きが余りにすばしこかった為、避けることはできずそのバックステップのエネルギーがもろに彼女の後頭部経由で俺の顎に到達した。
目の前が一瞬白くなり、次の瞬間俺、と彼女は砂浜に仰向けに倒れ込んだ。
運悪く、水際を歩いていた。なので仰向けの俺たちに波が覆いかぶさるのも必然と言えば必然だ。それも砂混じりの、めんどくさい波が……
「ちょっと…… ゴメン… 大丈夫? 早乙女くん?」
「イテテテ… お前、頭平気か?」
「頭、平気かって、この状況で喧嘩売る気?」
「よせ、頼む、顎痛えんだ、笑わすなーー」
「頭固いんだ私。それより…… 砂だらけだね、あたし達…」
「それなっ お前も……」
彼女の白のワンピースが砂混じりの水で… 下着が…透けていて……
彼女は俺の視線でそれに気付き、サッと顔を赤らめる。
「ど、どうしよう… このままじゃ帰れない…」
この状況は全くの想定外。車で来ていたなら対処は簡単だが、これから電車でこのまま帰るわけにはいかない。とすると、一体どうすれば…
ふと元いた世界での事を思い出す、名前も忘れた女子とこの辺をドライブして、その後入ったとこに……
俺は落ち着いて彼女に問いかける
「星野。冷静に話を聞いてくれ。」
星野美月はペタリと女の子座りで、波の届かない砂浜の上で、俺をじっと見つめる。
「この近くに、洗濯機、乾燥機付きの部屋があるホテルがあるはずなんだ。」
「…は?」
「落ち着け。別にそこでお前をどうこうしようなんて思っていない。ただ現実的にこのまま電車に乗れるか俺たち?」
俯きながら首を振る。
「なら、シャワーも浴びれるし、服も洗濯して乾かせる。どうだろう、他にいい案があるかお前に?」
「違う……よね?」
「何が?」
「これも、早乙女くんの『プラン』じゃないよね?」
「断じて違う。それに海が見たいって言ったのお前だし。」
「あっ… そっか。」
少し不安げな笑みを見せる星野美月に
「だからこれは緊急事態なんだ。こんな時に…お前の信頼を打ち消すような事……ぜってーしねーよ…」
「そうだね… うん、ゴメンね… ちょっと疑っちゃった」
「よし。遅くならないうちに、行くぞっ!」
「うん、行こ…… プッ」
「へ? 何?」
「早乙女くん…… お尻…… 下着丸見え!」
まあそうだろうな。でもな星野、お前もな……
「海なんて超久しぶりだよーー 気持ちいい!」
さっきまでの眠さは互いに吹き飛んだようだ。今はただ海からの風を胸いっぱいに吸い込み、傾きゆく太陽を江ノ島越しに眺めている。
真っ青な空と海。吹き抜ける海風。
そして隣の星野美月。
嬉しそうに海を眺める彼女は今何を考えているのだろうか。
俺たちは水際をブラブラ歩いている。彼女が先頭で俺はその少し後ろを歩いている。互いに何も言わず、ゆっくりとした足取りで初秋の夕暮れの海を感じていたその時。
突如、一羽のトンビが彼女の目の前を、本当に彼女スレスレに、通り過ぎていった。
「きゃっ!」
彼女は急に後ろに飛び下がる。もし俺がもう少し距離を開けていたら見事なバックステップとなっていただろう。だが残念なことに、俺との距離はそこまでのスペースを許さず、彼女は後ろ向きのまま俺と衝突してしまう。
そう言えばバスケで県大会出場、と言っていたな。道理でこの素早さ! よし、軽く受け止めてやろ……
ガッツーン
「いってーーー」
顎に衝撃を受け、俺も仰け反ってしまった。彼女の動きが余りにすばしこかった為、避けることはできずそのバックステップのエネルギーがもろに彼女の後頭部経由で俺の顎に到達した。
目の前が一瞬白くなり、次の瞬間俺、と彼女は砂浜に仰向けに倒れ込んだ。
運悪く、水際を歩いていた。なので仰向けの俺たちに波が覆いかぶさるのも必然と言えば必然だ。それも砂混じりの、めんどくさい波が……
「ちょっと…… ゴメン… 大丈夫? 早乙女くん?」
「イテテテ… お前、頭平気か?」
「頭、平気かって、この状況で喧嘩売る気?」
「よせ、頼む、顎痛えんだ、笑わすなーー」
「頭固いんだ私。それより…… 砂だらけだね、あたし達…」
「それなっ お前も……」
彼女の白のワンピースが砂混じりの水で… 下着が…透けていて……
彼女は俺の視線でそれに気付き、サッと顔を赤らめる。
「ど、どうしよう… このままじゃ帰れない…」
この状況は全くの想定外。車で来ていたなら対処は簡単だが、これから電車でこのまま帰るわけにはいかない。とすると、一体どうすれば…
ふと元いた世界での事を思い出す、名前も忘れた女子とこの辺をドライブして、その後入ったとこに……
俺は落ち着いて彼女に問いかける
「星野。冷静に話を聞いてくれ。」
星野美月はペタリと女の子座りで、波の届かない砂浜の上で、俺をじっと見つめる。
「この近くに、洗濯機、乾燥機付きの部屋があるホテルがあるはずなんだ。」
「…は?」
「落ち着け。別にそこでお前をどうこうしようなんて思っていない。ただ現実的にこのまま電車に乗れるか俺たち?」
俯きながら首を振る。
「なら、シャワーも浴びれるし、服も洗濯して乾かせる。どうだろう、他にいい案があるかお前に?」
「違う……よね?」
「何が?」
「これも、早乙女くんの『プラン』じゃないよね?」
「断じて違う。それに海が見たいって言ったのお前だし。」
「あっ… そっか。」
少し不安げな笑みを見せる星野美月に
「だからこれは緊急事態なんだ。こんな時に…お前の信頼を打ち消すような事……ぜってーしねーよ…」
「そうだね… うん、ゴメンね… ちょっと疑っちゃった」
「よし。遅くならないうちに、行くぞっ!」
「うん、行こ…… プッ」
「へ? 何?」
「早乙女くん…… お尻…… 下着丸見え!」
まあそうだろうな。でもな星野、お前もな……