第5章 第11話

文字数 701文字

 時計を見ると九時。駅前のベンチに座り、何十件もの未読メッセージを眺める。どれも一行ずつ簡潔に俺と母を心配してくれている。水月に経緯を誤魔化さずに全て話そう、そう決めてLINEを書き始めた途端、スマホが震える。水月からの着信だ。

「ゴメンね… 今病院? お母様大丈夫? ケイは…」
「ありがと。それとゴメン連絡しなくて。水月、話があるんだけど。駅まで出てこれるか?」
「それはいいけど… あなたご飯食べた? お腹空いてない?」

 グーーー

「でしょ。うちにいらっしゃいよ。今から温めるから。」
「あ、でも、ご両親…」
「気を利かせt… え、えっと、なんだかお、遅くなるってーだから全然平気!」
「… 水月ちゃん。何か俺に隠してませんか? そっか。なら今からそっち向かうわ。二十分後くらい、かな?」
「… はい。待ってるね。」

 キッチリ二十分後、星野家のインターフォンを鳴らす。少しして水月が顔を出す。嬉しそうにドアの隙間から俺に手招きをする。途轍もない幸福感に目眩がしてくる。

 ダイニングに通され、湯気の立つ皿を見てまた腹が鳴る。
「はい、座って座って。食べて食べて!」
「おー美味そう! これお母さんが作ったんだよな?」
「そうなのー食べて食べてー」

 シーザースサラダ。オニオンスープ。スパゲティーカルボナーラと和風明太子パスタ。どれもファミレスで食べるより全然上手い… 行ったこと無いけれどきっと東京のイタリアンレストランの味はこんな感じなんだろう。

 水月のお母さんは料理上手なんだね、と言いかけてふと気付く、あれ、パスタって茹で上がってすぐ調理するのでは…

 かちゃかちゃ。ガッチャン。

「ただいまーー」

 おい。水月。おい。
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