最終章

文字数 753文字

 その五日後。

 駿太の合格をグループラインで知る。いつの間にかハナちやんも加わっており、彼女も無事合格したとのこと。

「これでみなの進路は決まったわね。小宮くんと間くんは残念だったわ…」

 小宮卓と間旬は残念ながら浪人が決まった。元の世界でも確かそうだった気がする… 菊池穂乃果は御茶ノ水にある大学の法学部に合格している、彼女は元の世界では確か広尾の大学だったはずだ。

 この様に元の世界のままの者もいれば進路が変わった者もいる。これから先のことは正直俺には想像が出来ない。

 それに俺自身が、四月から体育会サッカー部の入部を決めている。元の塾講ルートとは決別となる。

 そして何より最大の違い… 四月からの水月との生活。今俺たちはそれぞれの親の合意は何とか得たものの、肝心の物件探しに奔走中だ。今も元の世界で世話になった不動産屋を水月と訪ねる途中である。

 だが… 俺たちにとっての最難関は…

 プルっ プルっ プルっ

 これなのだ…

「『俺はまだ認めていない』ですって… 我が兄ながら、往生際の悪い…」
 水月が大きな溜息をつく。だがその目はどことなく嬉しそうだ。
 公園の桜の木は既に満開だ。今年は例年になく開花が早かった。二年前と同じ様に。この花が散り、若葉が目に眩しい頃、俺たちの新しい生活は始まる。

 何軒か物件を見せてもらいー二年前とは別の物件だったー、中々気に入る物件は無く、また明日別の物件をいくつか見せてもらうことにする。

 ガラガラの帰りの電車の中で少し疲れたのだろう、水月は俺の肩に寄り掛かり寝息と立てている。唐突に二人で行った鎌倉を思い出す。俺たちのその後の運命を決定的に変えたあの小旅行。俺自身をすっかり変えた、あの……

 隣で寝ている水月が起きたら言ってみよう、来週にでも、あの仏像を一緒に観に行こうと。
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