第8章 第6話
文字数 1,065文字
共通テストの結果が発表され、駿太は志望校に十分手の届く点数であった。そして本試験は俺の第一志望の入試の翌日である。その後、洋輔の志望学部、水月の志望学部の入試が続く。
洋輔は車椅子での受験となる。なんとその付き添いに栗栖さん、いや栗栖先生自らが買って出てくれたそうだ。栗栖さんから来院禁止令を出され、洋輔たちとは二週間ほど会っていないのだが、体調を含め準備は万端なようだ。
そしてー 肝心な駿太も今の所は咳一つ無い、と自画自賛している。きちんと手洗いも実施しマスクも欠かさず付けていると言う。
そして。
万全の準備の元、俺の第一志望学部の試験日となる。
俺は二年前にこの試験を受けている。可能性として、全く同じ問題が出てもおかしくない。正直言うと、それでは元塾講として『つまらない』。
歴史の歯車はどう転ぶのか? 最初の科目である英語の試験用紙が配られ、試験開始の合図とともにそれを一瞥する。
面白い。問題はほぼ、いや全く同じなのだが、答えの選択肢が全く変わっている! 選択問題は十分気を付けねば。記述問題も答えるべき内容がだいぶ変わっている。これは最後まで気が抜けまい。それでも頬の笑みが試験終了まで消えることはなかった。
国語。これも英語と同様、主題された文は同じだったのだが、問題がだいぶ変わっていた。古文に至っては作者―小野小町は同じだが全く別の文章であった。
水月に教わった古文は二年前よりも遥かに出来が良かった。
日本史― 奇跡が起きる。
問十三 下線部の時代に作成された仏像の中で現在も残されているものを一つ記述せよ
こんな問題は二年前には無かった。あったとしても違う答えを書いていただろう。試験会場でなければ大爆笑をしているところだ。
恐らくここにいる受験生の中で唯一無二の答えを力強く書き込む。
東慶寺所在 水月観音坐像
時間が二十分以上余ったので、問十三の回答の余白に水月観音の絵を描いてやった。まさか減点されることはあるまい……
こうして俺の第一志望の試験は呆気なく終わる。手応えー日本史はまず満点。英語は二問微妙。国語は漢字が不確かなのが一問と古文の訳し損ねが一問か。
各答案用紙の受験番号と氏名も間違いなくチェックしたので、結果はまず間違いなく合格だろう。
それでも帰りの電車の中では疲れからか爆睡してしまい、終点で駅員に肩を叩かれるまで目が覚めなかった。
「それとー スマートフォンはマナーモードにしておいてくださいよ。ずっと鳴ってたから。」
ハッとしてスマホを見ると… 栗栖さんから何度も着信していた。
洋輔は車椅子での受験となる。なんとその付き添いに栗栖さん、いや栗栖先生自らが買って出てくれたそうだ。栗栖さんから来院禁止令を出され、洋輔たちとは二週間ほど会っていないのだが、体調を含め準備は万端なようだ。
そしてー 肝心な駿太も今の所は咳一つ無い、と自画自賛している。きちんと手洗いも実施しマスクも欠かさず付けていると言う。
そして。
万全の準備の元、俺の第一志望学部の試験日となる。
俺は二年前にこの試験を受けている。可能性として、全く同じ問題が出てもおかしくない。正直言うと、それでは元塾講として『つまらない』。
歴史の歯車はどう転ぶのか? 最初の科目である英語の試験用紙が配られ、試験開始の合図とともにそれを一瞥する。
面白い。問題はほぼ、いや全く同じなのだが、答えの選択肢が全く変わっている! 選択問題は十分気を付けねば。記述問題も答えるべき内容がだいぶ変わっている。これは最後まで気が抜けまい。それでも頬の笑みが試験終了まで消えることはなかった。
国語。これも英語と同様、主題された文は同じだったのだが、問題がだいぶ変わっていた。古文に至っては作者―小野小町は同じだが全く別の文章であった。
水月に教わった古文は二年前よりも遥かに出来が良かった。
日本史― 奇跡が起きる。
問十三 下線部の時代に作成された仏像の中で現在も残されているものを一つ記述せよ
こんな問題は二年前には無かった。あったとしても違う答えを書いていただろう。試験会場でなければ大爆笑をしているところだ。
恐らくここにいる受験生の中で唯一無二の答えを力強く書き込む。
東慶寺所在 水月観音坐像
時間が二十分以上余ったので、問十三の回答の余白に水月観音の絵を描いてやった。まさか減点されることはあるまい……
こうして俺の第一志望の試験は呆気なく終わる。手応えー日本史はまず満点。英語は二問微妙。国語は漢字が不確かなのが一問と古文の訳し損ねが一問か。
各答案用紙の受験番号と氏名も間違いなくチェックしたので、結果はまず間違いなく合格だろう。
それでも帰りの電車の中では疲れからか爆睡してしまい、終点で駅員に肩を叩かれるまで目が覚めなかった。
「それとー スマートフォンはマナーモードにしておいてくださいよ。ずっと鳴ってたから。」
ハッとしてスマホを見ると… 栗栖さんから何度も着信していた。