第3章 第8話
文字数 1,434文字
「星野さんは男子の中で有名だからみんな下の名前まで知っているよ」
洋輔がいつもの優しい笑顔で星野に言う。
「そんな… どうして有名なの?」
「それは…」
「友達いなくて本ばかり読んでいるから?」
「そ、それもあるけどー その、なんて言うか… おい、駿太!」
駿太がニヤニヤしつつ、
「星野さん、うちの学年でずっと三位以内に入ってたからなー」
「三位? 私は大体三十位前後よ」
「いや、成績じゃなくて…」
「じゃ、何が?」
「だから〜、おいケイ、任せた!」
俺は咳払いをし、
「だから、その、男子の中での人気? まあ、美人コンテストみたいなモンー」
「それは容姿、性格、成績、品性などを総合したもの? それとも他の基準が?」
吉川、もといヨシムラ円佳がめんどくせー、と面倒臭そうに言い放つ。菊池穂乃果は腹を抱えて笑いを堪えている。
「まあ、さておき、星野さ。下の名前って親が付けてくれたもんじゃん。本人にとっては掛け替えのない親からの贈り物なわけじゃない。だからそいつの名前を友達なら大事にする訳。苗字だけじゃ、『星野』だけじゃ全てじゃない。『星野美月』がお前そのものなのだから」
おおお、と皆がどよめく。水月もどうやら納得してくれたようだ。まあ『水月』という名前は神様仏様がくれたものなのだが。
「よくわかったわ、早乙女ケイ君。これからはフルネームで呼び合う?」
「何このカップル… 斬新すぎてついていけねえ…」
水月が吉村円佳にキッとなり
「カップル? 私達は付き合っていないのだけれど」
「「「は?」」」
話の展開に皆は全く追従できなくなる…
「私達は、『同志』。そんなその辺のチャラチャラした男女の付き合いと一緒にされては困るわ。以後気をつけてくれる?」
二者はドン引き、二者は微笑む。そして、
「でも。早乙女君のこと、好きなんでしょ?」
優しく穏やかな菊池穂乃果のまさかの直撃弾を受け、水月は硬直する。は? え? ん? などと突如キョドりだす。顔がサッと真っ赤に色を変える。
この余りのわかりやすさにドン引きと微笑みの二者が入れ替わる。
「そーか、やっぱ星野さんケイのこと好きなんだ、クッソ、残念… でも、マジお似合いかもなー 勉強デートとかー ま、常人じゃありえねー」
「やだ、何よ、ちょっと可愛いじゃん、ウケるー。いーねー、青春してんじゃん。そっか、天然星野にも好きな男いるんだねえ、それがよりによって『ヤリ捨て』のケイとかってウケるー」
水月は何も言えなくなり、ただ俯いているだけだ。洋輔と菊池穂乃果もその冷やかしに加わり、場は一気に盛り上がる。俺はそれをただ苦笑いして見守っている。
話は更に盛り上がり、もう告ったかとかもうお泊まりしたのかなど、段々俺にも手に負えなくなってきている。水月はそれに対し小声で、付き合っていない、同志なんだ、と呟くばかり。
食事が運ばれてくると
「夏休みの間、毎日ケイにお弁当作ってあげたってマジ?」
「ホラ、あれやりなって、『アーン』 ケイの口にアーンしてやんなよ!」
「ちょっと円佳言い過ぎ! 可哀想だって星野さん…」
「はー? 言い出しっぺは穂乃果じゃん!」
「まあ、ちょっと見てみたいかも、だけどー… 星野さん? なんかゴメンね…」
「…‥いけないかな?‥…」
突然、水月が立ち上がる
「早乙女、ケイくんを好きじゃ、いけないかなあ?」
かなり広いガストの店内がシーンとなる。
まだ箸をつけていないナポリタンの上に水滴が落ちる。
そして来た時とは逆に小走りで店を出て行く。
洋輔がいつもの優しい笑顔で星野に言う。
「そんな… どうして有名なの?」
「それは…」
「友達いなくて本ばかり読んでいるから?」
「そ、それもあるけどー その、なんて言うか… おい、駿太!」
駿太がニヤニヤしつつ、
「星野さん、うちの学年でずっと三位以内に入ってたからなー」
「三位? 私は大体三十位前後よ」
「いや、成績じゃなくて…」
「じゃ、何が?」
「だから〜、おいケイ、任せた!」
俺は咳払いをし、
「だから、その、男子の中での人気? まあ、美人コンテストみたいなモンー」
「それは容姿、性格、成績、品性などを総合したもの? それとも他の基準が?」
吉川、もといヨシムラ円佳がめんどくせー、と面倒臭そうに言い放つ。菊池穂乃果は腹を抱えて笑いを堪えている。
「まあ、さておき、星野さ。下の名前って親が付けてくれたもんじゃん。本人にとっては掛け替えのない親からの贈り物なわけじゃない。だからそいつの名前を友達なら大事にする訳。苗字だけじゃ、『星野』だけじゃ全てじゃない。『星野美月』がお前そのものなのだから」
おおお、と皆がどよめく。水月もどうやら納得してくれたようだ。まあ『水月』という名前は神様仏様がくれたものなのだが。
「よくわかったわ、早乙女ケイ君。これからはフルネームで呼び合う?」
「何このカップル… 斬新すぎてついていけねえ…」
水月が吉村円佳にキッとなり
「カップル? 私達は付き合っていないのだけれど」
「「「は?」」」
話の展開に皆は全く追従できなくなる…
「私達は、『同志』。そんなその辺のチャラチャラした男女の付き合いと一緒にされては困るわ。以後気をつけてくれる?」
二者はドン引き、二者は微笑む。そして、
「でも。早乙女君のこと、好きなんでしょ?」
優しく穏やかな菊池穂乃果のまさかの直撃弾を受け、水月は硬直する。は? え? ん? などと突如キョドりだす。顔がサッと真っ赤に色を変える。
この余りのわかりやすさにドン引きと微笑みの二者が入れ替わる。
「そーか、やっぱ星野さんケイのこと好きなんだ、クッソ、残念… でも、マジお似合いかもなー 勉強デートとかー ま、常人じゃありえねー」
「やだ、何よ、ちょっと可愛いじゃん、ウケるー。いーねー、青春してんじゃん。そっか、天然星野にも好きな男いるんだねえ、それがよりによって『ヤリ捨て』のケイとかってウケるー」
水月は何も言えなくなり、ただ俯いているだけだ。洋輔と菊池穂乃果もその冷やかしに加わり、場は一気に盛り上がる。俺はそれをただ苦笑いして見守っている。
話は更に盛り上がり、もう告ったかとかもうお泊まりしたのかなど、段々俺にも手に負えなくなってきている。水月はそれに対し小声で、付き合っていない、同志なんだ、と呟くばかり。
食事が運ばれてくると
「夏休みの間、毎日ケイにお弁当作ってあげたってマジ?」
「ホラ、あれやりなって、『アーン』 ケイの口にアーンしてやんなよ!」
「ちょっと円佳言い過ぎ! 可哀想だって星野さん…」
「はー? 言い出しっぺは穂乃果じゃん!」
「まあ、ちょっと見てみたいかも、だけどー… 星野さん? なんかゴメンね…」
「…‥いけないかな?‥…」
突然、水月が立ち上がる
「早乙女、ケイくんを好きじゃ、いけないかなあ?」
かなり広いガストの店内がシーンとなる。
まだ箸をつけていないナポリタンの上に水滴が落ちる。
そして来た時とは逆に小走りで店を出て行く。