第5章 第7話

文字数 1,038文字

 話を進めているうちに水月は完全にリラックスしたみたいだ。子供の頃の話になって、その頃の写真が見たいと言ったら、
「私の部屋にあるんだけれど…」
「えー、見せてよー」
「部屋? 写真?」
「どっちも。」
「……いーよ」

 二十歳の俺からすれば微笑ましいやりとりの後、水月の部屋に行く。幅の広い階段を登り右に曲がると水月の部屋であった。扉を開けると十畳はあるだろうか、ベッド、二人がけのソファー、勉強机などが楚々と置かれている。

「広っ! 綺麗! 流石女子の部屋!」
 それにいい匂いがする。それは言わんとこ。
「あの、そこに、座って…」

 指定されたソファーに座ると水月はクローゼットの中を探り出す。その後ろ姿が目に入る。白いシャツ越しにブラジャーが透けて見える。ゴクリと喉が鳴る。相当奥にアルバムは仕舞われていたのか、上半身をクローゼットの奥まで入れているため、水月は今犬の様な格好となっており、必然的に臀部をこちらに突き出す姿勢をとっており、タイトなスカートに下着のラインがクッキリ浮かび上がっており…

 いかん! フツーに健康な十八歳の性欲が高まってきてしまう。早く幼い頃のアルバムを見せてもらい心を癒さねば…… ゴクリ。

 ソファーに座りながら水月の子供の頃の写真を見ているのだが、正直全く集中できない。隣の水月との距離がアルバムをめくる毎に縮まり、二冊目を終える頃には完全に密着しているのだ。床に置いてある三冊目に手を伸ばした時、すぐ真横に水月の顔があった。目と目が合う。その穢れない瞳に心が吸い寄せられる。

 アルバムに伸ばしかけた手を水月の顔に添える。その瞳が一瞬大きく開かれ、やがてゆっくりと閉じられていく。ゆっくり、ゆっくりと顔を寄せていく。鼻と鼻が触れ合う。甘い吐息に頭がクラクラになる。軽く閉じられた唇に俺の唇をそっと合わせ……

 ブルッ ブルッ ブルッ

 静謐な部屋に響く俺のスマホ。顔と顔が離れる。再び目と目が合う。その目が一瞬の哀しみの色を見せた後、早く出てあげてと言う。
 スマン、と目で言ってから横に置いてあるスマホを手に取る。

『襲われた 助けて』

 里奈からのラインだ。気がついたら勢いよく立ち上がっていた。
「どうしたの? 何かあった?」
 咄嗟に口にする。
「ゴメン、親が、母親が倒れたみたいなんだー」
 
 水月も立ち上がる
「大変! 何処?」
「家… の中みたい…」
「すぐに帰ってあげてっ! 早くっ!」
「う、うん… スマン、ゴメン…」
「いいからっ 後で連絡頂戴!」
「わ、わかったー」
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